(『天然生活』2020年8月号掲載)
機嫌よく過ごす工夫と心持ち
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
女子美術大学とセツ・モードセミナーで学んだのち、渡仏。洋服やジュエリーのデザイナーとして長く活躍してきた弓・シャローさんは、今年82歳になります。
ひとり息子は独立し、いまはパリ郊外の自宅でひとつ年下の夫との暮らしを楽しむ毎日です。
「典型的な没落貴族......」と、弓さんが笑う生家は旧男爵家。
戦中戦後の物のない時代を経験し、愛情とユーモアはたっぷりながら、変容する実家の暮らしぶりも見てきた弓さんは、「今日の朝焼けは最高にきれい」「マルシェのアスパラガスがみずみずしくておいしい」、そんな毎日の小さなことが、感謝と感動の連続だと語ります。
いつもエネルギッシュで楽しげな弓さんですが、そのパワーは、一体、どこからくるのでしょう?
「常にやりたいことがあって、わくわくしているからでしょうか」
難しそうとか、この歳でいまさら......などと、頭の中でこねくりまわさず、「やってみたいと思った時点で、私の場合は、すでに手も足も出ています」と、目を輝かせます。
わからないことは素直に人に尋ねながら、IT機器も新しいメイク法もマスターしました。
日々を豊かに暮らす秘訣
愛するものだけに囲まれて暮らす
家の中は、家具からタオル類、せっけんひとつまで好きなものでそろえています。
「やっぱり、これ好き。いいわ」と、見るたび、使うたびに幸せになるそう。
元気の秘訣は好奇心を忘れないこと
面白そうと思ったら、即、挑戦。70歳過ぎて始めたiPadは、ラインにゲームに新聞チェックに、いまや腹心の友。
好奇心が新しい楽しみを運んでくれます。
似合うもの、好きなもので基本のスタイルをつくる
洋服はサイズ感が命。購入するときは、手足をあれこれ動かして、時間をかけて試着しましょう。
「結局、似合うといわれる服、長く着る服はジャストサイズの服ですね」
ほめ言葉は最高のプレゼント
大切にしているお父さまの教え。
洋服でも髪形でも言葉の使い方でも、相手の素敵なところを見つけると、弓さんはすぐに口に出して伝えます。笑顔とともに。
“とりあえずボックス”で人間関係を良好に
長い人生、家族でも友人でも、関係がぎくしゃくする時期だってあります。
「短気を起こして疎遠になるのではなく、あせらず待ってみるのも手ですよ」
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<撮影/ジャン・クロード・シャロー、齋藤順子、山川修一 取材・文/髙場実乃>
弓・シャロー(ゆみ・しゃろー)
1938年、東京生まれ。パリで「プチバトー」などのデザイナーとして活躍するほか、ファッション関連の仕事に携わる。現在はパリ郊外の自宅で夫とふたり暮らし。著書に『100歳までパリジェンヌ!』(扶桑社)ほかがある。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです