ベーシックカラー3色。あとは自由に!
何にでも合う色は、実は何にも合わない色。
黒はオールマイティーというのは、危険な考え方だなと思います。
なぜなら、黒は個性と存在感があるため、時に、着る人の前に立ちはだかってしまうから。通常よく言うベーシックカラー=使いやすい色、ではないのです。
私が大切にしていることのひとつに、「好きな色を突き詰める」という考えがあります。「好き」を突き詰めていくことが、結果、「自分らしさ」を掘り起こすきっかけになるからです。
ベースとなる色を決めると、気分は安定し、クローゼットは整理され、手持ちのワードローブは円滑にまわり始めます。
大草直子流 ベーシックカラーの見つけ方
その数、3色。スタイリングの土台を盤石にしておくと待っているのは、「自由」 です。
「気分のままに色を楽しむ自由」。「難しいと思われるアイテムに挑戦する自由」。そして、「忙しない朝、スタイリングが決まらずイライラするストレスからの自由」。
私を例に見ていきましょう。
MYベーシックカラーは、季節によって変わるのですが、【春】の場合
1 オートミールのように乾いたベージュ
2 軽めの黒
3 ドライなネイビー(色落ちしていないデニムも含む)
枚数をたくさん持っている、ということではなく、困ったときに帰る色。かつ、形もベーシックが良い。
グレー(黒も含む)、ベージュ、ネイビー……の中から、自分にフィットする色を選択できるのが理想です。
トップスでもボトムスでも、色によってはアウターも。トップスだけに頼りがちですが、アイテムにもまんべんなくベーシックカラーを行き渡らせると良いでしょう。
これからの私のスタイル、どう変わる?
こんな3色があれば、例えば、今まで人生には存在していなかったけれど、どうしても着たいと心が動く、その年のトレンドカラーにも手を出せます。
肌色やリップの色をコントロールする色なら、ボトムスにもってくれば良いわけだし。または、色は個性的ではないけれど、デザインが強くてひるんでしまうアイテムだって攻略できるのです。
例えば、DRIES VAN NOTENのジャカード素材のパンツ。どんなカラリングがきたって、乾いたベージュのニットなら、自分らしさも担保しながら、新しいおしゃれを楽しめます。朝の余裕が生まれるのは、言わずもがな。
この3色、ものすごく良い仕事をするので、早めに決めるのをオススメします。
ただし、着る自分も変化するので、 年に一度は見直しましょう。
大草直子さんからのメッセージ
50代になって、おしゃれも美容も、考え⽅が変わりました。何て⾔うのでしょうか、他者に向けた承認欲求のようなものが、「⾃分とどう向き合うか」みたいなことに形を変えた気がします。若い頃のような⼒技は効きません。時に、スローダウンすることも⼤事です。けれど、⽼いることに抗い(あえて、このワード使いました)、いつまでも⾃分であることに満⾜することも必要だと、⼼から思います。そのために何をするべきか――新しい服を買うことも、髪や肌をアップデートすることも⼤事。それ以上にやって欲しいのが、「⾃分を⾒ること」、そして「優しく触れること」だと思っています。
※ 『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』(大草直子著/マガジンハウス)からの一部抜粋記事です
* * *
ファッションエディター、スタイリストとして幅広く活躍する著者・大草直子さんによる「引いたり、⾜したり」の⼤⼈のTIPS集。体や体調が変化を遂げる40代50代こそ、おしゃれもゆっくりに——素材にこだわり、⾊や光や質感を重視し、スキンケア・下着選び・メイク・スカルプケアを⾒直すなど、著者が⽇々更新中の具体策を明かします。歳を重ねることの歓びが詰まった⼀冊です。
* * *
大草直子 (おおくさ・なおこ)
ファッションエディター・スタイリスト。1972年⽣まれ、東京都出⾝。⼤学卒業後、婦⼈画報社(現・ハースト婦⼈画報社)に⼊社。雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わった後、独⽴。2019年にメディア『AMARC(アマーク)』を⽴ち上げ、ファッション、ビューティ、⽣き⽅のレシピを毎⽇発信している。2021年、「AMARC magazine」を発刊。ファッション誌、新聞、カタログを中⼼に活躍するかたわらトークイベントの出演や執筆業にも精⼒的に取り組む。 新しいポップアップブランド「NO.b」が、10月16日から28日まで、新宿ルミネ1の2階で開催中。