• 読んで背筋が伸びた1冊、いままでにない感情があふれ出た1本。表紙を閉じたとき、映画館を後にしたとき、ほんの少しだけ、世界が変わってみえました。今回は、俳優の片桐はいりさんに「価値観を変えた本と映画」を伺いました。
    (『天然生活』2022年11月掲載)

    “安易な共感”を疑う視点をもつ

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    ここ1年で出合ったなかから、6作品を厳選してくれた片桐さん。

    「作品によって価値観が変わった、というより、むしろ、それに触れたことで自分の固定観念や思い込みに気づかされたって感じでしょうか。どの作品も完全には理解できていない。でも、映画や本に限らず、『すべて理解できた』と満足するのは、むしろ危険だと考えています。それは、自分の狭い理解のなかで結論を出しているだけ。『わかる、わかる』と共感するときこそ、自分を疑う。“わかる”の思い上がりに気づけるのが“わからない”作品を読む楽しみですね」

    闇で味わう日本文学

    画像: 中野 純著/笠間書院

    中野 純著/笠間書院

    万葉の昔から、日本文学に描かれる印象的な“闇”の場面を“闇案内人”の作者に手を引かれて歩くかのような1冊。

    「この世の半分は闇。闇の心地よさに目覚めたら世の中全部OKじゃないか?」

    みえるとか みえないとか

    画像: ヨシタケシンスケ、伊藤亜紗著/アリス館

    ヨシタケシンスケ、伊藤亜紗著/アリス館

    伊藤亜紗氏の著作をきっかけにヨシタケ氏がストーリーを考案。“違うこと”に対する捉え方を考えられる絵本。

    「『目の見えない人は世界をどう見ているか?』で、でんぐり返った世界をいままた絵本で」

    ブロッコリー・レボリューション

    画像: 岡田利規著/新潮社

    岡田利規著/新潮社

    東京、横浜、タイ。こんがらがっていく世界を生きる人々の姿を気鋭の演劇人が描く。表題作は第35回三島由紀夫賞受賞。

    「読書の、ふだんのものの見方の当たり前を丸ごとひっくり返してくれて爽快」

    TITANE/チタン

    画像: 2021年 フランス 監督:ジュリア・デュクルノーギャガ ©2021 KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE – VOO

    2021年 フランス 監督:ジュリア・デュクルノーギャガ
    ©2021 KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE – VOO

    幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれた主人公。以降、彼女は自動車や金属に異様な執着をみせるように。

    「男だ女だ、人だ物だ、ウソだホントだ、もうどーでもよくなって快感!」

    PLAN 75

    画像: 2022年 日本 監督:早川千絵 ©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

    2022年 日本 監督:早川千絵
    ©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee

    少子高齢化がいっそう進む近い将来の日本では、満75歳から生死の選択権を与える制度“PLAN 75”が国会で可決・施行されることに。

    「75歳で安楽死、それもいいなあ、と一瞬思ってしまった自分に衝撃」

    ドンバス

    画像: 2018年 ウクライナ、ドイツ 監督:セルゲイ・ロズニツァ サニーフィルム

    2018年 ウクライナ、ドイツ 監督:セルゲイ・ロズニツァ サニーフィルム

    2014年に一方的にウクライナからの独立を宣言した、東部のドンバス地方の政治や社会を風刺的に描く。2018年に制作された。

    「ドキュメンタリーを見るよりも、この状況への無知を思い知らされる」



    <取材・文/福山雅美>

    画像: ドンバス

    片桐はいり(かたぎり・はいり)
    大学在学中に銀座文化劇場(現シネスイッチ銀座)でもぎりのアルバイトを始めると同時に俳優活動を開始。趣味は「3度のごはんの次に、映画と散歩」。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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