(『天然生活』2022年11月掲載)
ページを開き、違う人生を生きる
とにかく読書好きの萩尾さん。
「読んでいない本がたくさんある状態に安心します。『よかった、まだまだ読むものがある』って」
ちなみに1冊ずつ読了するタイプではなく、2冊、3冊と同時並行で読み進めるのが好きだそう。
「よくばりなのね。私自身の人生は一度きりだけれど、本や映画に向き合っている間は、まったく違う人生を歩くことができる。だから、よりたくさんの本を読みたいし、映画を楽しみたいと思うんです。私にとって、それは旅。違う人生を歩いてさまざまな価値観に触れる、旅のような感覚です」
自然農法 わら一本の革命
耕さず、肥料もやらず、農薬などもまったく使わず、草も取らず。それでいて豊かな収穫をもたらす「自然農法」を実践する著者の無の哲学と実践。
「もしここに暮らさなかったら、きっと手に取らなかった本だと思います」
センス・オブ・ワンダー
化学薬品による環境汚染に警鐘を鳴らした『沈黙の春』で知られる著者の遺作。幼な子との自然の探索が、詩情豊かな筆致で綴られている。
「神秘や不思議に目をみはる感性を大人になっても忘れぬようにと心に刻みました」
バベットの晩餐会
慎ましく生きる初老の姉妹のもとにやってきた女性。メイドとして仕える彼女はかつてパリで腕を振るった名シェフだった。
「主人公が草を摘むシーンや、頑迷(がんめい)な人々が『食』を通して五感を開いてゆく様子は何度観てもいい」
<取材・文/福山雅美>
萩尾エリ子(はぎお・えりこ)
ハーバリスト。「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」主宰。植物の豊かさを伝えることを喜びとする。著書に『香りの扉、草の椅子』(扶桑社)、『あなたの木陰 小さな森の薬草店』(扶桑社)など。https://www.herbalnote.co.jp/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです