(『天然生活』2024年2月号掲載)
お茶のお稽古や、着物を気軽に着る機会をもちたい
長女が生まれたのを機に、服づくりを始めた、美濃羽まゆみさん。
「いまでは、娘は高校生。ここ数年の間に、アシスタントや縫製を手伝ってくれる方に恵まれて、服づくりは少しゆとりができました」
並行して、新たに取り組んでいるのが、子どもたちの居場所づくり。
長男が学校へ行かない選択をしたことを機に、友人とフリースクールを始めて3年。
忙しい日々が続きますが、今年の目標はひとつのことに向き合う時間をつくること。お茶のお稽古や着物を気軽に着る機会をもちたいそうです。
「母がお茶やお花をやっていたので勧められましたが、若いころは反発心があったんです。だけど、大人になるにつれ、いいものだなと思えるようになりました。
子どもと日本舞踊を習い始めたことも大きかったですね。気さくな先生で所作に込められた意味も教えてくださり、すごくためになる。
着付けの先生に習って着物も着るようになりました。先生がお茶会に誘ってくださったりもしてすごく楽しいんです。もっと気軽に着て出かけたいし、ご縁があればお茶も習ってみたいです」
ひとつのことに向き合うことは、日常でもできる。暮らしのなかで心がけているのは「ながら」をやめること。
以前は朝食時に新聞を読んでいたけれど、食べることに専念。お茶は仕事しながら飲むのではなく、始める前に。気持ちが整いすっと仕事に入れます。
「じっくり味わうとおなかも満たされる。毎日やるには胆力を使いますが、集中するって心地いいからできることはやろうと思います」
手づくりの時間を分かち合うことも、これからやっていきたいこと。手軽な手芸キットの販売など、きっかけづくりを考えています。
「コロナ禍でおうち時間が増えるなか、初心者の方に向けた手縫い教室をするようになって、これまでは自分が楽しくて服づくりをしてきたけれど、暮らしのなかに手芸の時間を届けたいなと思うようになりました。
手縫いなら少ない道具ででき、仕上がりもきれい。ほどいて直すのもミシンより簡単。
フリースクールでも子どもたちと手づくりするんですが、ボランティアの大人たちも楽しそうなんです。手づくりの喜びを伝えられたらうれしいです」
ささやかな目標をかなえるための近道アイテム
身近にある小物や道具を上手に生かして。
気負わず、いつでも気軽に向き合えるように。
コーディネートを広げて、着物をもっと気軽に
ふだんのお出かけは、ほどよく力を抜いて、自分らしく自由に。洋服と合わせる小物を、着物とも組み合わせておしゃれを楽しみます。
「アクセサリーを着けなくても、髪がそのままでも、着物は華やかになる。理にかなった、いいものだなと思います」
コートや羽織の代わりにストールを合わせて。自然素材で編んだかごバッグは着物にもよく合います。
「このあいだ洋服の生地を帯に仕立ててもらったのですが、手持ちの着物に映えました。リバティプリントですが、紅葉のようなモチーフなので合うかなと思ったんです」
日本の伝統色とは違った色合いで新鮮、着物の楽しみは尽きません。
自作のお茶碗でお茶の時間を楽しく
ご近所にある工房で陶芸を体験し、はじめてお茶碗をつくったそう。
光の角度で色が変わって見えてきれい。夜の帷のような、湖のような、景色を想像させる、素敵な佇まいです。
「たまたまご縁があって体験させてもらったのですが、お茶を習ってみたかったから、思いきって茶碗をつくってみることにしました。
工房の方がいい感じに釉薬をかけて、焼いてくださって。想像以上に、かっこいい茶碗になって、すごくうれしいです。この茶碗とともに、いま、この瞬間に集中する練習に励みたいと思います」
抹茶の色もよく映えて、たてるのが楽しい。また一歩、お茶への思いが深まりました。
ざるやかごを使って保存食づくりを習慣に
干し野菜づくりは、すっかり定着した、日常の習慣。下ごしらえのついでに切って、ざるやかごに並べて、縁側で天日干し。
「干すと日持ちするし、かさも減るので旬の野菜がたくさん手に入ったときもおいしく食べきれます。鍋物に使ったり、漬物にしたり。かさばるえのきだけも軽く干すだけで小さくなります」
四角い平編みの竹かごはもともと養蚕で使われていた道具だそう。「木枠があるので、持ち運びしやすくて便利なんです。梅の土用干しにぴったりでした」
新たな目標は、子どもの大好きなたくあんをつくること。
「大根を干すところから、やってみたいですね」
〈撮影/わたなべよしこ 取材・文/宮下亜紀〉
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美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
手づくり暮らし研究家。ハンドメイド子ども服・おとな服ブランド「FU-KO Basics.」主宰。京都の町家にて夫、娘、息子、猫2匹と暮らす。子どもの居場所『くらら庵』を運営し、2023年11月にカリキュラムを組んだフリースクール『ゆらり庵』もオープン。
インスタグラム@minowa_mayumi
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです