(天然生活2022年2月号掲載)
仕事と暮らしは“対立”するものではなく“結びついていくもの”
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
ふたりの女の子を育てながら「植物料理家」として活動している野田悠子さん。かつてはフランス料理店で腕をふるっており、当時から野菜や果物、ハーブを使った料理がお得意でした。
季節の移り変わりに寄り添い、素材を見つめ、その表情や性質を生かした料理に仕立てたいとの思いから名乗るようになった肩書きでした。屋号の「きみえ」は、料理上手だったおばあさまのお名前が由来です。
レストラン時代は、毎日夜中までひたすら仕込みの日々。当時は長時間厨房に立つことも苦ではなかったそうですが、出産を機に仕事のかたちを変える決断を迫られました。
子育てしながら活動できる方法を探し、3年前から「きみえ」をスタート。現在は不定期の食事会や料理教室、夫と切り盛りするお店「Hitotsu」のプロデュースなどを行っています。
店に常勤するよりは融通が効くものの、それでも仕事と家事、育児の両立はかなりの労力。現在子どもたちは遊びたい盛り、子育ての難所ともいえます。それでも野田さんは子どもたちと一緒に、暮らしの楽しみを見つける心がけを忘れることはありません。
「ひと時もじっとしていないふたりに囲まれ毎日大変ですが(笑)、周りから『この可愛い時期も、あっという間よ、楽しんでね』といわれて、本当に貴重な時期なんだと考えるようになって。子どもの瑞々しい感性に触れることで、私にも新しい感覚が広がりますし、何気ない言葉からハッとさせられ、学ぶことも多いのです」
家族との暮らしの中で生まれた喜びや楽しみは、料理という仕事にも還元されていく。
仕事と暮らしは対立するものではなく、結びついていくもの。内面に経験が積もれば、料理にも深みが増していく。そんな風に野田さんは日々実感しているそうです。
植物料理家きみえ・野田悠子さんの新しい試み5つ
野田さんの新しい試み01
朝食に大きなおむすびを握る
時間に余裕がある休日などに、大きなおむすびだけの朝ごはんを。土鍋でごはんを炊いて、具もいくつか用意して、握りたてをパリパリの焼きのりで包んでいただきます。大きく握ると子どもたちも大喜びで、普段なら食べられない量もペロリ。
「そんな様子を見ていると、大人の私も元気が出ます。手で握ることで、いつものごはんが特別なものになる。年々おむすびのもつパワーを実感するようになりました」
野田さんの新しい試み02
料理書以外の本を読む
レストラン勤務だったころは、本といえばレシピ本ばかりを読んでいたという野田さん。けれど経験を重ねるにつれ、料理にはスキルだけでなく、内面にある世界がにじみ出ることを痛感。
自分自身の世界を深めるために、改めて本に向かうようになりました。忙しい毎日で、じっくり腰をすえて本に向かうのはなかなか難しいですが、それでも可能な限り、読書の時間を持つようにしているそう。
〈撮影/萬田康文 取材・文/田中のり子〉
野田悠子(のだ・ゆうこ)
大学卒業後にフランス留学、フランス料理店のシェフを経て、ふたりの女の子を出産。子育てのかたわら、「植物料理家」として「きみえ」の活動をスタートする。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです