(『天然生活』2024年2月号掲載)
手軽な調理で味わえるものも多い、春の山菜
春の気配を感じると、本田さんの心は浮き立ちます。なぜなら1年ぶりの、待ちわびた季節だから。
山菜をおいしく食べる何よりのポイントは、収穫したら、あるいは購入したらすぐに必要な下ごしらえを済ませ、味わうこと。
とはいえ、あくが強いものばかりとは限らず、実は下ごしらえなしで、一般的な野菜のように手軽な調理で味わえるものも多いそう。
「なかには水煮など1年中手に入るものもありますが、生のものを味わえるのは、春のひと時だけ。ほろ苦さや香り、食感を楽しみたいので、味つけは薄めに、おひたしなどの場合はゆで時間も短めにします。揚げものにする場合も、衣に卵を加えない精進揚げで、軽やかに味わいたいですね」
また、山菜が採れる地方へ出かけたなら、地元スーパーのお惣菜売り場のチェックもお忘れなく。
「鮮度が命の山菜は、地元にしか出回っていないケースも。スーパーは、現地の気取らない味を体験できる見逃せないスポットですよ」

こんな身近なものも山菜
● あさつき
● のびる
● クレソン
● わさび
● ゆきのした
● 山うど
● 三つ葉
● 行者にんにく など
本田さんおすすめの山菜ベスト10
山菜好きの本田さんが、毎年必ず味わうのがこちら。
1位 ふきのとう
2位 こごみ
3位 せり
4位 ぜんまい(乾燥)
5位 コシアブラ
6位 たらの芽
7位 うるい
8位 根曲がり竹
9位 あずきな(なんてんはぎ)
10位 わらび
香り高き山菜界のお姫さま
1位 ふきのとう
食べる部位:つぼみ おいしい時期:2~3月
*「おいしい時期」は、その年の気候や天候、地域などにより前後します。また、促成栽培のものは、時期が早くなります。

ほろ苦く、ふわりと鼻に抜けるような芳香が春の訪れを感じさせる。
生育中のつぼみの部分であり、実は、葉柄の部分である“ふき”よりも栄養が豊富。
カリウムや鉄、ビタミンを多く含む。
“いかにも山菜”なのに、扱い楽々
2位 こごみ
食べる部位:若芽 おいしい時期:2~4月

山菜らしい繊細な見た目を持ちながら、あくは少なく、調理しやすいのがうれしい。
味にもクセがなく、シャキシャキした食感とかすかな粘りが特徴。
ゆでたあと、水で締めると色留めできる。
さっとゆがいて香りをいただく
3位 せり
食べる部位:若芽、若葉 おいしい時期:1~5月

数少ない、日本原産の野菜のひとつ。
さわやかな香りの成分は、健胃、解熱、解毒の作用を持つともされ、春の七草にも数えられる。
火をとおしすぎると香りも栄養も失われるので注意。
意外に“染まりやすい”タイプです
4位 ぜんまい(乾燥)
食べる部位:若芽の茎 おいしい時期:1年中

独特の歯ごたえとまろやかな風味がある。
あくがとても強いため、収穫後すぐにゆでてから乾燥させたものをもどしてから調理するのが一般的。
良質なタンパク質やビタミンを含み、古来より健康食として親しまれる。
地味に見えて、熱狂的ファン多数
5位 コシアブラ
食べる部位:若芽 おいしい時期:4~5月

つややかで透明感のある緑色の葉が美しい山菜。
あくは少なく、根元はコリコリとした食感で、葉にはほろ苦さがある。
栽培がほとんどされず、出回る量も少ないため、ほぼ地元で消費される。
春を告げる、山菜の王さま
6位 たらの芽
食べる部位:若芽 おいしい時期:4~5月

ほろ苦さとさわやかな香り、根元のもっちりとした食感で人気が高い。
全国に自生しているが、栽培されたものも出回る。
乾燥すると苦味が強く出るので、保存の際はペーパーに包んで密封する。
繊細な色合いと軽やかな食感
7位 うるい
食べる部位:若芽 おいしい時期:4~5月

長ねぎに似た独特のぬめりとほろ苦さが特徴。
地域により、“山かんぴょう”“ギンボ”などさまざまな呼び名を持つ。
生食できるほどのあくの少なさなので、さっと火をとおして食感を楽しみたい。
下ゆでいらずでたけのこよりお手軽
8位 根曲がり竹
食べる部位:若芽 おいしい時期:5~6月

「たけ」といいつつ、笹の仲間。
一般的な孟宗竹のたけのこと比べると細くて小さいが、味は格別とされる。
えぐみが少なく、ほのかな甘味が。下ごしらえをして水にひたせば、冷蔵で約3日保存可。
ほどよいコクがクセになる
9位 あずきな(なんてんはぎ)
食べる部位:若芽 おいしい時期:3~5月

ゆでたときに小豆のような香りがすることからこの名がついた。
正式な和名はナンテンハギ。
マメ科に分類されるため、さっとゆでたものは、ほんのりと豆類のようなコクと甘味を感じられる。
コリコリ食感が命です
10位 わらび
食べる部位:若芽の茎 おいしい時期:4月

太くてやわらかいものが最上とされる。
表面はシャキッとして中は粘りのある独特な食感とほろ苦さが美味。
手軽な水煮や乾燥のものもあるが、生が手に入ったなら、下ごしらえをしてぜひ賞味を。
出合えたら一度は食べてほしい
番外編 幻の山菜「みず」
食べる部位:茎 おいしい時期:5~9月

地元でしか流通しない、幻の山菜。透明感があり、みずみずしい。
「下処理で茎の薄皮をむくんですが、1日おいただけで乾燥し、むきづらくなってしまう繊細さ。当日に持ち帰れない場合は、スーパーなどで惣菜になったものを買うほどの好物」
〈監修/本田明子 取材・文/福山雅美 イラスト/はまだなぎさ〉
本田明子(ほんだ・あきこ)
家庭料理家。小林カツ代の一番弟子として25年間助手を務め、料理の味、技、考え方を学び、2007年に独立。雑誌、書籍、TV出演、ウェブメディアなど、多岐にわたり活躍。シンプルで奥深い、簡単だけれど手を抜かないレシピが好評。『本田明子さんの さあ、なに食べよう。』(マガジンハウス)など著書多数。インスタグラム@honda_akko
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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