ある日保護したふつうの黒猫
我が家の10匹の猫たちは、みんな、元お外の猫。
純粋な……というのは変ですが、純雑種さんです。
なぜか黒猫が多く、10匹中7匹が黒猫なのですが、その中に1匹だけ、なぜか体の一部がライオンのように長毛の子がいるのです。
その子「ちみ~」が来たのは、10年以上前のこと。
我が家の近所の畑の近くで熱中症で倒れていたところを保護しました。昔ながらの土地ですので野良猫さんも多く、おそらくその中の誰かが生んだ子だと思います。
すぐに病院に連れて行き、晴れて元気になったちみ~を我が家にお迎えしたとき、ちみ~の毛足は普通の短毛種。
「うちは黒猫が多いから、違いが分からなくて困るね~」と笑っていたのですが、まるでその言葉を聞いて、「目立たなければ!」と焦ったりでもしたのか、成長とともに、あちこちに長い毛が混ざりはじめました。
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長い毛の部分は少し茶色で、特に首の周りがたてがみのようにポッサポサ。
夏場は少し短くなりますが、冬場はまるで洋種のように立派な長毛さんになります。
この子は洋猫? ルーツに思いを馳せる
日本の猫はお顔が丸い子が多いらしいのですが、ちみ~は女の子なのにシュッとした縦に長いハンサムフェイス。
これは、洋種の子に多い顔立ちなのだそうです。
「もしかしたらご近所のおうちで暮らしていた洋種の子と、どこかの野良さんの娘なのかな?」と我が家ではいつも話題でしたが、調べてみると、長毛さんと短毛さんの間に子どもが生まれても、長毛になる確率は低いのだとか。
長毛というと、なんだか特別パワーがある気がしていましたが、どうやら長毛は劣性遺伝子。短毛遺伝子が優勢遺伝子なんだそうです。
ですので、「長毛さん」と「100%短毛の遺伝子を持った猫」とでは、絶対に短毛しか生まれないのだとか。
ただ、その短毛の中に、何%かの割合で「長毛遺伝子を隠し持った見た目は短毛の子」が産まれることがあり、その「隠れ長毛」さんと、「長毛」さんがかけあわされば、その子たちの中に何割かの確率で長毛の子が産まれるのだそうです。
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雑種の猫ならではの愛らしさ
現在、日本にいる猫はほとんどが雑種で、純血の日本猫はほぼいません。
第二次大戦後にシャムやアメリカンショトヘアなどの洋種がたくさん日本にやってきて、もともと放し飼いが多かった日本猫と交配するようになったそうです。
とはいえ、雑種でも日本猫のかわいらしさは今もしっかり残っています。
やや丸く頬が張り鼻筋が通ったお顔。中くらいの体。太い足と、短いしっぽ。
なんだか、昭和生まれ? と思われる個性ですが、洋種の純血種とは違う、雑種ならではの愛らしさがいいですね。
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咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」