(別冊天然生活『小川糸さんの春夏秋冬を味わうシンプルな暮らし 』より)
“シンプル”と“じっくり"のバランスをとりながら
家にいる時間が増えてから、いかに家事を効率よく回すかを以前より考えるようになったという小川糸さん。
「効率化すると経済的だし、心身が楽になる。さらに余った時間を保存食づくりなどに回すこともできます。私の場合、すべての家事をがんばるのではなく、シンプルにする部分と、じっくり手をかける部分のバランスをとることを意識していますね」

朝、お茶を淹れる際に沸かしたお湯をポットに入れておき、1日かけて使う。「料理に使ったり、夜お酒と一緒に飲んだり」
食洗機を使うことで日々の食器洗いから解放されたり、嫌いなアイロンがけを潔くやめたり。そうやって家事を簡略化する一方で、味噌を仕込む時間や、パンや焼き菓子を手づくりする時間などを楽しんでいます。

食洗機に1日分の食器をためておいて、夜にまとめて洗うことも
遠出をすることが減った分、地元を見直す機会も増えました。愛犬ゆりねとの散歩や、自転車での外出を通じて、あらためて近所の魅力に気づくこともしばしばです。
「最近よく買うようになった野菜や卵の無人販売所、これまで入ったことのなかったお蕎麦屋さんなど。日々の買い物も、駅前のスーパーに行けばたいてい事足ります。わざわざ遠くまで出かけなくても、自分が暮らしている半径2kmの円の中で意外といろいろなことができるんだなと気づきました」

愛犬のゆりねは、小川さんにとってかけがえのない存在。「おおらかな性格で、人間にも犬にもすごくフレンドリーなんです」
ひとりで家事を背負い込むのは辛いこと。嫌なときは無理をせず、手を抜ける部分は抜くことも大事、と小川さんは話します。
「“こうすべき”にあまり縛られず、柔軟に考えればいいのではないでしょうか。私は疲れていたら外食するし、朝昼兼用の食事を近くのおいしいお弁当屋さんで買うこともよくあります。頻繁に銭湯に通うのは、気持ちいいのはもちろん、家のお風呂掃除の負担が減るという理由もあるんです」

近所の銭湯に通うのが楽しみのひとつ。手ぬぐいと石けん、化粧水とクリームのコンパクトな荷物を持って身軽に出かける
家事をシンプルにすると同時に、ささやかな楽しみを見いだすことも大切。小川さんにとっては、いままでつくったことのないお菓子をつくることや、ときどき地方からおいしいものをお取り寄せすることなどが、日常におけるよい気分転換になっています。
「今度は石けんづくりに挑戦してみたいと思っているんです」
無理をせず、自分らしく家事のメリハリをつける。それが健やかな日々をつくり出す秘訣なのかもしれません。
本記事は別冊天然生活『小川糸さんの春夏秋冬を味わうシンプルな暮らし』からの抜粋です
美しい山暮らしの中で見つけた、小さな暮らしと小さな幸せ
2022年から山小屋で暮らし始めた作家の小川糸さん。物語を紡ぎ、暮らしを整え、土に触れる小さな暮らしを実践しています。山小屋での春夏秋冬の季節の移ろいはとても美しく、どの瞬間もキラキラと輝いています。コロナ禍を経て、暮らしの足元を見直した小川糸さん。山小屋を建てることを決め、一念発起して車の免許を取得。山暮らしに向けて舵を取りました。季節の果物や野菜で保存食をつくり、自分の手で暮らしをつくる小川さんは、新たな場所で輝いています。小川糸さんの味わいある暮らしのエッセイや家時間の工夫、季節の食材を使ったレシピもご紹介します。
〈撮影/公文美和 取材・文/嶌 陽子〉
小川糸(おがわ・いと)
2008年のデビュー作『食堂かたつむり』以来、30冊以上の本を出版。多くの作品がさまざまな国で翻訳出版されている。著書に『とわの庭』(新潮社)や『小川糸さんの春夏秋冬を味わうシンプルな暮らし』(扶桑社)など。
※ 記事中の情報は『天然生活』2021年8月号掲載時のものです

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