(『天然生活』2017年3月号掲載)
歳を重ね、人生は深みを増し、心はより自由に軽やかに
漫才で学んだ、相手を生かすということ
漫才は、相手あってこその芸。48年もの長きにわたってコンビを組んでいた内海好江さんを亡くしてから、早いもので19年の歳月がたちました。
「好江さんの前に、10人くらい相方がいましたけどね。まあ、漫才の相方なんてもんは、ずいぶん、合わない、嫌な人もありましたよ。だからって、『もう、やめた』って、つきあいを断つわけにはいかないからね。それを、生かすようにするんですよ。
相手の嫌な部分は、自分にない部分。その、反対のところを生かせば、芸としては面白くなるにちがいないんだから。漫才がよくなるんだったら、いい人と仲よくやるよりも、そっちのほうをよしとする。

一日、ポット2杯分のお茶を、たっぷり飲むのが健康の秘訣。「100歳まで、あと5年ちょっとか。なんだか、いける気がするわね」
失敗も成功も、経験を積んでたどり着くもの
だいたいね、相手が自分の思いどおりになるなんて考えちゃいけないよ。いまだって、そう。若い人に、私のやり方を押しつけようとは思わない。少し話をしてやって、興味をもつ子なら、もっと教えてほしい、と自然にやってくる。そうじゃない子は、私と感性が合わないんだね。人なんて、思いどおりになんかなりゃしません。それをわかっていないと、自分が面倒なことになる。長く生きて、ますますわかった。自分は自分、それだけ」
うんと背伸びをして多くを学び、ときに失敗し、経験を積んで歳を重ねたからこそ、ありのままの自分でしかないのだと気づく。たくさんのことを知った未にようやく、ぽん、と軽く、「私は私だよ」といいのけられる。
そして、その積み上げた経験は確実に、言葉の絵を鮮やかに描くことにつながっていました。その人生が重みを増していくのとは逆に、舞台の上で繰り出される言葉は、より軽妙に、自由になっていくのです。

今日の着物は、この日のために仕付け糸を取った新品。「歳とってから着ようと、とっておいた着物を出したの。新しい着物って、やっぱりいいね」
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<撮影/大段まちこ 取材・文/福山雅美>
内海桂子(うつみ・けいこ)
1922~2020年。大正11年、両親の駆け落ち先である千葉・銚子で生まれ、東京・浅草で育つ。16歳で漫才の初舞台を踏み、漫才師として初の芸術選奨文部大臣賞など多くの賞を獲得。97歳で逝去。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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