猫にほほえむ夫。果たして猫はわかっているのか?
たとえば人間の赤ちゃんと接するとき、自然と微笑んでいたり、おかしな顔をしてみたりすることはないでしょうか?
そうすると赤ちゃんは、そんな私たちの表情に反応し、きゃっきゃ笑ったりしてくれて、ああ、今、この表情は伝わっているのだなと感じます。
では、猫は人間の表情をどれくらい理解しているのでしょう?
私の夫は、猫が少し離れた場所にいるときでも、にっこり笑って、声を発さずに「好き」の気持ちを伝えます。
そのたび、思うのです。猫は目が悪いというし、そんなことして意味があるのかなあ? と。

猫が人の表情を理解しているかを調べた研究が
ところが調べてみると、オークランド大学というところの研究チームが、猫が人間の表情をどのように区別しているかを調査していることが分かりました。
調査では、12匹の猫を対象に住み慣れた場所で行い、家族と、見知らぬ人のそれぞれが、「うれしそうな顔」と「怒った顔」をしてみたそうです。
うれしそうな顔では、あぐらをかいて座り、微笑みながら、歯を見せます。リラックスした状態です。
怒った顔では、同じようにあぐらをかいているのですが、拳を握りしめ、眉毛に力を入れて口も閉じるのだとか。
2メートルも離れた位置で、それを3分間記録しました。
その結果……
猫たちは、家族が怒った顔をしているときよりも、うれしそうな表情をしているときのほうが、より近づいてくることが分かりました。

また、うれしそうなときは、ポジティブな行動も見られたそうです。
ただ、見知らぬ人が行った際は、怒っていてもうれしそうでも変化は見られませんでした。
これらの結果から、猫たちは、身近な人間の表情の変化がしっかり分かっていることが判明したといいます。
飼い主がうれしそうだと、猫もうれしい
もちろん、この結果は、「うれしそうな顔をしている=何かいいことをしてもらえる」といった「いい記憶」が関係しているのかもしれません。たとえば、遊んでもらえたり、おやつをもらえたり、猫にとってうれしいことです。
でも、きっと、それだけではなく、家族がしあわせそうだと猫たちもうれしい。
そんなシンプルな心の伝達が起こっているのではないでしょうか。
夫がにこにこと猫を見ているとき、猫たちは、喜んで近づいてきて、その膝に座ります。
人も、猫も、しあわせはつながって、大きなしあわせを呼んでくれるんですね。

咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」

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