(『天然生活』2020年6月号掲載)
ゆるやかに暮らしと心を整えるルール

午後でも柔らかい光がたっぷりと差し込むリビングは、白と茶をベースにした気持ちのいい空間。家具は最低限に、小さな植物や絵などをさりげなく飾って
月並みではありますが“すっきり”という言葉がぴたりとはまる青木さんのご自宅のリビング。写真を見てもわかるように、ごちゃごちゃとした雑多なものはどこにも見当たりません。
「細々としたものは2階の書斎に持っていくようにしています。この家を建てたとき、リビングには本当にものを置かないと心に決めて。だから棚は最低限だけ。棚があると人ってどうしてもものを置いてしまうんですよね」
片づけや整理整頓は得意でも不得意でもなく“ごく標準的”と振り返ります。
でも、理論を知ったり知識を広げたりすることには興味津々。元来の勉強熱心な性格も手伝い、整理整頓関連の本や雑誌を読みあさり、自分なりに知識を深め、実践してきました。
そんな青木さんが整理収納アドバイザーの資格を取ろうと思い立ったきっかけは、仕事の幅を広げたかったから。勉強は答え合わせ的な要素も多かったといいますが、ハッとした出来事もあったそうで。
「セミナーで先生のお宅に伺ったのですが、どこも美しく片づいているのはもちろんなのですが、クローゼットが驚くほどすっきりしていて。衣類の量がとにかく少なかったのです。私は衣類関連が自分のウィークポイントだったので、数を減らそうと何度も試みましたがなかなかうまくいかなくて」
布の質感や使いこまれた生地の風合いが好きだという青木さん。
どうして減らせないのか改めて考えてみたとき、自分は冷えとりをやっているため自然素材の洋服でないとだめなこと、また、そういうものはすぐには見つからないので、気に入った服は何年も着続けていることなどに気づいたのだといいます。
「大事なものや必要数は人それぞれ違って当たり前。だから、片づけ方も同じではないとストンと腑に落ちたのです。それを知ったうえで、本当に必要か改めて考え、慎重に選ぶようになりました」
青木さんの整えルール
どうして片づかないのか、腕組みをして考えてみる
スペースに対してものが多すぎること、収納場所が定まらないこと、使う場所としまう場所の動線が悪いこと......など、「散らかる」理由はいくつかあるといいます。
「きれいにしてから散らかるまでの過程を詳細に思い返して、じっくりと考えてみてください。どこかにヒントがあるはずです」

「私の場合は本棚があふれがち。7割ほどにとどめて写真立てのスペースまで本が侵食してきたら、処分を考えます」
また、“戻す”もキーワード。
「元の場所にきちんと戻せば散らかりません。とにかく戻しやすいかどうかを念頭に置いて実際に試してみることです」
青木さんの整えルール
“たくさんあっていいもの”は違っていて当たり前
家族構成や家の間取り、収納スペースなどは、それぞれ違うもの。だれかの収納方法がすべてのケースに当てはまるわけがありません。

「無印良品」の綿のカットソーは何年も買っている定番。冷えとりをしてから、汗もかくのでたくさん
数を減らすことは大事ですが、なんでも減らせばいいというわけではなく、大切なのはきちんと管理できているかどうか。
「我が家は夫が化学物質に敏感な体質ということもあり、消耗品や食料品はまとめてネットで買うため、ストックも多いほうだと思います。そういう家の事情をよく頭に入れることも大切です」
青木さんの整えルール
引き出し収納は“一目瞭然”が鉄則
キッチンの引き出しも、洗面所の引き出しも、書斎の小引き出しも、青木さんの家の引き出しという引き出しは、どこを開けてもどこに何が入っているのかひと目でわかります。

キッチンの引き出し。「無印良品」ケースを使用して、カトラリーや調理道具などを集約。「ある程度は分類していますが、基本は投げ入れ方式です」
「上から見下ろしたときにすべてのものが、どこにあるかわかるよう心がけています。細かい仕切りや箱などを置いて、よく使うものを手前にし、不便に感じたらどんどん移動させていきます」
また、引き出し自体が深い場合はファイルボックスで区切って立てるほか、たまにしか使わないものなどは箱に入れて下に置いても。
<撮影/砂原 文 構成・文/結城 歩>
青木美詠子(あおき・みえこ)
文筆家。冷えとりに関する著書のほか、日々を綴ったエッセイ、家づくりに関するブログにもファンが多い。昨年、整理収納アドバイザーの資格を取得。現在は片づけの訪問レッスン、自宅セミナーなども開催している。http://www.aokimi.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです