猫10匹の大家族。日々ケンカばかり?と思いきや……
我が家は猫が10匹の大家族。
よく「ケンカにならないの?」と心配されることがあります。
たしかに多頭飼いになると、猫たちにかかるストレスのリスクもあり、また性格の合わない猫同士のいさかいもあると耳にします。
ところが、うちでは、なぜかみんな仲良し。
老齢の子も、まだ1歳半の子も、一緒にだんごになって眠り、毛づくろいをし合います。

家が狭いと縄張り争いになる?
いったい何が、彼らをそうさせているのでしょうか?
おそらく、猫同士のケンカの一番の理由は、本能としての「なわばり争い」ではないかと思います。匹数が増えると、どうしても猫たちのパーソナルスペースが減り、「自分の場所」を守るためにいさかいが起こってしまいがちです。
たまたま我が家は田舎に住んでおり、残念ながら豪邸ではありませんが(笑)、ゆとりのある部屋の作り。特にリビングがまるまる吹き抜けになっており、クローズではない階段もそこにあるので、上下運動を楽しむことができる余裕があるようです。
では、家が広くないと、猫たちのなわばり争いは起こってしまうのでしょうか?

ふと考えたとき、もしかして、それよりももっと大切なことがあるのじゃないかなと思い至りました。
猫たちにとって「なわばり」は「場所」だけではありません。
一緒に暮らす「人間の家族」も「他の子と取り合うなわばり」のひとつです。
猫の数が増えると、それより人間の数が少ない場合、なかなか手が回らないことがあります。すると、猫たちは、少しでも愛情を自分のものにしようと、他の子とライバル意識が生まれてしまいます。
そんな中で、うちの子たちがそうならずにいてくれるのは、我が家の場合、ひとえに猫第一主義の夫のマメで重いほどの、みんなへの愛と心配りのようです。
猫に合わせてこまめにスキンシップ
猫にもいろいろいます。ぐいぐいあまえに来てくれる子は身を任せてかわいがればいいのですが、引っ込み思案な子や神経質な子は、なかなか自分からあまえられません。
そんなときは、他の子がじゃましないときに、その子だけを「もういい~」となるほどあまあまにかわいがります。
抱っこが好きな子は抱っこをし、お尻を撫でられるのが好きな子はそこを。体に顔をうずめてフンフンにおいを嗅がれるのが好きな子には、くしゃみが出そうになっても鼻をこすりつけます。
そんな「オーダーメイド」の愛情の注ぎ方で、猫たちは日々、愛に満足し、「この人はちゃんと自分のものだ」と、他の子と分け合うことができるようです。
「足りない」。
空間でも、愛でも、猫が満たされていないことが、ストレスやイライラを呼び、他の子との余裕のない関係性になってしまう様子。

猫をしっかり観察して、それぞれに合うケアで円満に
スペースのない家でも、高低差のあるキャットタワーで空間を分けたり、それぞれに安心できる猫ベッドなどをあげてくつろげるようにすることで解消できますし、お仕事が忙しくなかなか関われない方でも、猫たちの個々の性格を把握することで、ピンポイントで彼らが望む愛情を与えることができます。
そうすれば、ケンカは減り、みんな仲良し。
人も動物も、「愛に満たされる」ことで、他の命にも優しくなれたら素敵ですね。


咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」