(『天然生活』2019年12月号掲載)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
掃除も片づけも“ついで”にすませて無理なく
いつ訪れても、気持ちよく片づいている坂井より子さんのお宅。
時間をかけて身についた片づけの習慣は、来客のため、家族のためというよりは「自分が気持ちよく作業できて、楽できるから」なのだといいます。

片づけや掃除を「わざわざ」しないのが坂井さん流。フローリングもカーペットも、気づいたときだけほうきがけ。床に置きっぱなしの物がないので、いつでも気軽にできる
自分流の片づけシステムさえつくったら、あとはゆるく、無理なく継続するだけ。
「片づけにまとまった時間をかけるのは面倒でしょう。私は全部、“ついで”です。掃除も片づけも、何日おきとか1日何回、などの決め事はつくらず、気づいたときに。たとえば、棚のほこりに気づいたらついでに全部ふく、植木がひとつ乾いていたら、ついでに全部に水やりする、といった具合」
“ものを置きっぱなしにしない”を徹底して
ひとつ徹底させているのは、テーブルの上と床の上に、ものを置きっぱなしにしないこと。
「置き始めるときりがないものね。これだけは子どもが小さいころからいっていました。片づけないと捨てますよ、って」
テーブルと床に置きっぱなし、出しっぱなしがないのは、物にすべて指定席を決めていて、戻しやすいからでもあります。

しまいにくい物、ため込みやすい物にこそ指定席をつくることで、はみ出す、あふれることがありません。
たとえば冷蔵庫に入りづらい長ねぎや、空き箱、空きびん、使用済みの食品トレーにまで、専用の場所をつくっています。
「空き箱や空きびんは、好きな物、使えそうな物だけ残します。食品トレーはパン粉をちょっとまぶしたり、切った野菜をのせたりするのに便利だから、白い物だけ数枚残しておき、一度使ってから捨てるようにしています。“ここに入る分だけ”と決めておけば、ため込むこともないですよ」
その場所で、あるもので、自分流に整える
「主婦は達成感の積み重ね」という坂井さん。
「だって、だれも褒めてくれないでしょう。きれいに片づけたり並べたりして、その様子を見て小さな達成感を感じることが、自分へのご褒美だと思うの。そうして満足感を感じられれば、家族にもやさしくなれますしね」

現在のご自宅は娘夫婦、息子夫婦と暮らす3世帯住宅。設計段階で1階の坂井さん夫妻の住居スペースにご自身はほぼ、なんの希望も出さなかったそう。
「収納も、そんなにたくさん欲しいと思わないですし。その場所で、ある物で、自分流に整えていけばいい、と思うんです」
〈撮影/柳原久子 取材・文/前中葉子〉
坂井より子(さかい・よりこ)
神奈川・葉山で娘・息子夫婦と3世帯で暮らす。自宅で料理教室を主宰。料理だけでなく、お話会で若いお母さんたちの支えとなる活動も行う。著書は『暮らしをつむぐ』(技術評論社)ほか。