(『天然生活』2019年12月号掲載)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
苦い経験を経て気づいた“長続きする秘訣”
自分のことを「面倒くさがり」と評する一田憲子さん。
すっきりと整えられた自宅を見る限り、そうは思えないのですが……。
「いえいえ、これまでにいろいろと失敗をしながら、なんとかここまできたんです」

数々の本や雑誌の編集・執筆を手がける一田さん。取材で全国各地を回り、さまざまな人の自宅を訪れてきました。
「きれいに片づいているお宅を見ると、すぐに『素敵だな』と思って片づけ方や整理法をまねしてみる。でも、すぐに続かなくなる。そんなことの繰り返しでした」
収納グッズについてもしかり。苦笑まじりに話してくれたのがこんな経験談です。
「以前、古道具店で見つけたきれいな箱を収納用にたくさん買って、重ねて置いていました。そのうち、下の方の箱に物を入れるのが面倒になって、箱の上に物を置くようになってしまったんです」
やがて、一田さんは気づいたのです。
どんなに素敵だと思う整理法でも、それが自分の性格やライフスタイルに合っていなければ、意味がないのだということを。
試行錯誤の末に見つけた“自分らしい”整理術
「私はこまごまとした整理の仕方が苦手。そのことをあらためて自覚しました。自分自身が続けられる片づけ法を見つけることが、何より大事なんですよね」
いま守っているのは、物を大まかに分類して定位置を決め、使ったら元に戻すこと。それ以外は、いたっておおらかです。

収納道具も質実剛健。物を入れやすいと感じる、間口が狭くて奥行きのある箱やかごを使っています。
「箱の中身まではきっちり整理せず、ぽんと放り込むだけ。私の場合、このほうが多少乱れてきても楽にリセットできるから」
苦い経験を経てたどり着いたのは、“がんばりすぎない片づけ法”。
一田さんの家に漂う、どこかほっとする雰囲気の秘密は、こんなところにあるのかもしれません。
一田さんの「片づけのおとも」
マスキングテープ
箱の中身がひと目でわかるよう、これでラベリング。
「パソコンやラベルライターを使うと億劫になってしまう。これにペンでさっと書いて貼るのが一番手軽です」

〈撮影/有賀 傑 取材・文/嶌 陽子〉
一田憲子(いちだ・のりこ)
人気シリーズ『暮らしのおへそ』(主婦と生活社)をはじめ、雑誌や書籍などの企画、編集、執筆を手がける。著書に『おしゃれの制服化』(SBクリエイティブ)など多数。http://ichidanoriko.com/