• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。猫の撫で方について。

    猫を撫でる時のゴロゴロは幸せの音

    我が家の猫たちは、みんな、夫が大好き。

    夫が誰かをかわいがっていると、その時の「はいはいー」という声にピンとくるのか、夫は一階にいるのにわざわざ二階から駆け下りてきて、なでなでをせがんだり、気がつけば彼の周りは猫だらけになっています。

    たまたまそこで私が寝ていると、うつらうつらする中で猫たちのゴロゴロのコーラスが耳に響いたり……。

    画像: 猫を撫でる時のゴロゴロは幸せの音

    私が撫でるときは……

    そこで、はっと気づくのです。

    「あれ? 私のとき、猫たちって、喉を鳴らしてる?」

    試しに、夫に撫でられると、0.5秒で喉を鳴らし始める「でかお」を私が撫でてみました。

    ……ゴロゴロいわない……。

    画像: 私が撫でるときは……

    おかしい、と他の子たちもなでなで。

    なんということでしょう。夫のときはうるさいくらい喉を鳴らす猫たちが、私のときにはまるで鳴らし方を忘れたように、ピタっとその音を止めるのです。

    私は夫に訊きます。

    「どうやって撫でてるん?」

    夫は不思議そう。

    「別に……。気持ちよくなってほしいなあ、と思いながら、ふつうに触ってるだけやで」

    ふつうに触る……この感覚が私にはピンときません。むしろ私のほうが猫の気持ちを考えて一生懸命尽くしてるつもりなのに!と思うのですが、負けているのがくやしくて、しぶしぶながらネットなどで「猫が喉を鳴らすほど気持ちよい撫で方」というのを調べてみました。

    猫が喜ぶ撫で方とは?

    猫が喜ぶ「なでなでポイント」がいろいろ分かったのです。たとえば、こんな場所。

    (1)あごの下

    【理由】猫のフェロモン腺があり、安心感を得やすいところだから

    【コツ】人差し指や中指で軽く撫でたり、円を描くようにマッサージする

    (2)首の後ろ(うなじ)

    【理由】母猫になめられていた感覚に近く、リラックスできるから

    【コツ】手のひらで優しく揉むようにマッサージする

    (3)背中(首から背骨に沿って)

    【理由】自分では届きにくい場所で、かつ感覚神経が多く通っているので、人間でいう「肩のマッサージ」のように気持ちよい

    【コツ】しっぽの付け根まで、優しく、ゆっくり、毛並みに沿って撫でる

    なるほど、と頭に刻みます。

    ちなみに、どの場所も常に猫の機嫌を読んで、耳が後ろにたれたり、しっぽをパタパタさせればストップすることが大切なのだとか。また、撫でるときは力を入れすぎず、指圧というより「羽根で撫でるくらいのイメージ」がいいそうです。

    画像: 猫が喜ぶ撫で方とは?

    猫が嫌がる箇所もあるので注意

    もちろん、逆にNGな場所もあります。

    たとえば、「お腹」「足先」「ひげ」「しっぽ」。無理に抱きあげることもストレスになる場合があるのだそう。

    とはいえ例外も私は知っています。

    我が家の引っ込み思案な女の子「ウン」は、なぜかお腹を撫でられるのが大好き。自分からコロンと横たわって、お腹を長い時は30分近く円を描くように優しく撫でていると、とても安心感を得るようです。

    画像1: 猫が嫌がる箇所もあるので注意

    きっと、小さな頃に、親代わりだった長男猫「ビー」にそこをよく舐められていたからだと思います。

    思えば、夫はそうした「テクニック」にとらわれず、「この子はこういう撫で方が好きだな」と全身全霊心を傾けて猫たちを癒している様子。

    テクニックを学んだものの、頭でっかちな私の撫で方はどうやら猫たちには「まだまだ」認定されたよう。

    結局、私ではなく夫にばかり集まっていく猫たちの姿に、「私も技ではなく、気持ちを寄り添わせる大切さを持っていこう……」と、今日も柔らかな毛玉に心をこめて手を添えるのです。

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


    画像2: 猫が嫌がる箇所もあるので注意

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



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