(別冊天然生活『暮らしを育てる台所2』より)
手放せない料理道具
15年前に東京から福岡の能古島に移住したエッセイストの檀太郎さんと晴子さん。
暮らしを支えるのは、台所に並ぶ道具たち。
大量のジャムを煮たり、地元のトマトを裏ごししたり、保存瓶に仕分けしたり......。
手仕事を支える相棒のような道具は、使い込むほどに味わいを増し、ふたりの暮らしに欠かせない存在です。
銅鍋
ジャムを煮るときは必ず銅鍋で。

「直径40cm。1~6kgの果物を一度に煮ることができます。そのうち底が壊れるんじゃないかと思うほど使っています」
ムーラン
フランスの裏漉し器、ムーラン。晴子さんはもっぱらトマトに。

「地元のトマトは味が濃くてやわらか、安価なときに仕込みます」
味つけずに煮たものを、ハンドルを回してピューレに。
「粗さによって3種類のこし板を取り外して使います」
中華鍋
中華料理のさまざまな道具を揃える、横浜「照宝」の中華鍋。

「試しに使ってみてくださいと譲っていただいて。両手鍋に木の持ち手を付けて、力のない女性でも使いやすいように工夫してあります」
ホウロウのジャムロート
ジャムやトマトピューレ、とうがらしオイルなどを、保存瓶に小分けするとき、「野田琺瑯」のジャムロートが便利。

「どろどろしたものを入れるときに重宝しますね。ひとつふたつならともかく、うちは何十個分もだから。普通の暮らしにはいらない遊び道具かもしれません」
本記事は、別冊天然生活『暮らしを育てる台所2 』(扶桑社ムック)からの抜粋です
* * *
本書には、12軒の台所が登場します。
そのどれもに共通するのは、日々の暮らしが息づいていること。
トントントン、ザクザクザク……。いつの間にか、体に染みついた動きで料理が完成し、さっきまで、慌ただしかった気持ちが落ち着いていく。
家族や、遊びにきた友人や仲間と調理の作業をリレーしたり、味見をお願いしたり、最近あった出来事を報告し合いながら、わいわいにぎやかに料理し、台所に立つ。
支えられたり、笑顔になったり。たくさんの時間を台所で過ごし、ごはんをつくる。その小さな幸せを積み重ねることで、豊かな暮らしは生まれるのでしょう。
台所は、私たちの「暮らし」そのものなのです。
<撮影/大森今日子 取材・文/宮下亜紀>
檀 太郎・晴子(だん・たろう、はるこ)
共にエッセイスト。太郎さんは作家・檀一雄の長男でCFプロデューサーとしても活躍してきた。2009年福岡の能古島へ移住。太郎さん最新刊『檀流・島暮らし』(中央公論新社)、晴子さん『檀流スローライフ・クッキング』(集英社)など著書多数。