• 年齢を重ねるほど、ちょっとした物忘れが増えるのはだれにでもあることです。料理研究家の松田美智子さん医学博士の朝田隆先生に、認知症予防の観点から、物忘れにおすすめの食材や調理法を教えてもらいました。今回は、朝田先生が提唱している「まごたちわやさしいに」の食材から、「し=しいたけ・きのこ」を使った「干ししいたけと豚の炊き込み玄米」のレシピを教わります。
    (『天然生活』2024年11月号掲載)

    「干ししいたけと豚の炊き込み玄米」のつくり方

    画像: 「干ししいたけと豚の炊き込み玄米」のつくり方

    ごはんは精製されていない玄米や分づき米がおすすめ。プチプチとした食感でよく噛むことにもつながります。

    しいたけ(し=しいたけ・きのこ)の栄養

    ビタミンDには神経細胞を保護したり、神経伝達物質の調整を行ったりと脳に重要な働きが。日光を浴びると体内でも合成されるが、ビタミンDを多く含む干ししいたけも積極的に取り入れて。もどしすぎず食感を残して調理を。

    材料(つくりやすい分量)

    ● 玄米(一分づき)2カップ
    ● 干ししいたけ3枚
    ● 豚肩ロース薄切り肉150g
    ● 長ねぎ1/4本
    ● しょうが(みじん切り)大さじ1
    ● A
    ・しょうゆ、酒各大さじ1
    ● B
    ・水2カップ
    ・酒大さじ2
    ・薄口しょうゆ大さじ1
    ・塩小さじ3/4
    ● ごま油大さじ1

    つくり方

     玄米はとぎ、両手でこすり洗いを数回して30分浸水し、ざるにあけて15分水をきる。豚肉は1cm四方に切り、Aを合わせて15分おく。干ししいたけは水でもどし(下記参照)、石づきを落として傘は放射状に8~10等分し、軸はようじに刺す。長ねぎはみじん切りにする。

     土鍋の飯釜を中火で温め、しょうが、ごま油を入れて炒める。香りが立ったら豚肉を漬け汁ごと加えて炒め、干ししいたけ、長ねぎ、玄米を加えてさっと炒める。Bとしいたけの軸を加え、ふたをして強火にする。噴いてきたら、極小の弱火にして、鍋中を大きく混ぜ、再びふたをして8~10分加熱する。中の状態を確かめて火を止め、8~10分蒸らす。軸を除き、切るように混ぜる。

    画像: うま味が詰まった軸も捨てずに活用

    うま味が詰まった軸も捨てずに活用

    食感よく食べられる「干ししいたけ」のもどし方

    画像1: 食感よく食べられる「干ししいたけ」のもどし方

    干ししいたけに水を霧吹きする(または水道水でさっと濡らす)。

    画像2: 食感よく食べられる「干ししいたけ」のもどし方

    そのまま15分ほどおき、表面の水を内部に浸透させる。石づきに包丁が入ればいい。

    画像: もの忘れ防止に“しいたけ”の栄養「干ししいたけと豚の炊き込み玄米」のつくり方。ビタミンDが脳にうれしい/料理研究家・松田美智子さん、メモリークリニックお茶の水院長・朝田隆先生

    軸も捨てずに活用

    軸は煮ものなどに加えて、後で取り出す。またはしょうゆに漬け、干ししいたけ風味のしょうゆとして使うといい。

    物忘れ防止のための食事のすすめ

    物忘れと認知症は似て非なるものです。物忘れが増えると不安に感じることもあると思いますが、生活に支障のない物忘れはいわば黄色信号。認知症を遠ざけるような生活習慣、食事を心がけるとよいですね」と、医学博士の朝田隆先生。食生活については何より栄養バランスが大事だそう。

    医学博士の吉村裕之氏が提唱しているバランスのよい食事の合言葉「まごわやさしい」に加えて、朝田先生は「た(卵)」「ち(チーズ・乳製品)」「に(肉)」を加えた「まごたちわやさしいに」の提案をしています。

    「とくに、脳の約4割を構成しているタンパク質は積極的に摂りましょう。また、よく噛んで食べることで脳の刺激になり、歯ぐき、舌、頬などの筋肉に活力を与えて『脳活』にもつながります。野菜なら歯ごたえよくゆでるなど、心がけてみてください」

    さらに、食事内容も当然ながらシチュエーションも大切とのこと。

    「アメリカで行われた研究によると、持続的な孤独を感じている人は、孤独を感じていない人に比べて認知症の発症リスクが91%も高いことがわかりました。食事もひとりでではなく、家族や友人と摂ることが大切だと考えます。高齢者のための会食イベントを実施している自治体もありますし、オンラインで会食するというのもひとつの手です。ぜひ、食事の時間を楽しくおいしく過ごしてください」

    「まごたちわやさしいに」の主な栄養素

    [豆・大豆]…タンパク質、ビタミン、不溶性食物繊維など

    [ごま]…脂質、タンパク質、不溶性食物繊維、カルシウムなど

    [卵]…必須アミノ酸など

    [チーズ]…タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、カルシウムなど

    [わかめ・海藻]…ビタミン、ミネラル、食物繊維など

    [野菜]…ビタミン、ミネラル、食物繊維など

    [魚]…タンパク質、鉄分など

    [しいたけ・きのこ]…ビタミン、不溶性食物繊維、カリウムなど

    [いも類]…炭水化物、ビタミンC、食物繊維など

    [肉]…タンパク質、L-カルニチン、鉄分など

    画像: 物忘れ防止のための食事のすすめ


    〈監修/朝田 隆 料理/松田美智子 撮影/山田耕司 取材・文/結城 歩〉

    松田美智子(まつだ・みちこ)
    日本料理をベースにした家庭料理の教室を1993年より主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった保存食づくりを基本に、いまの時代に無理なく楽しめる季節の仕事を提案。著書に『65歳からの食事革命』(文化出版局) amazonで見る など。
    インスタグラム:松田美智子@michiko_matsuda/自在道具@jizai_dougu

    朝田 隆(あさだ・たかし)
    医学博士。認知症治療・予防の第一人者。筑波大学名誉教授。2015年にメモリークリニックお茶の水を開院。理事長・院長を務める。『面白いほどわかる シニアのための脳の新常識』(宝島社)など著書多数。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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