(『ほんとうの豊かさに出合うための9週間』より)
手をつけるのは一番物が多いところから
手放すことを始めようと思った時、「まずどこから手をつけていけばいいのか」と悩む方も多いと思います。
引き出し一つ、というスモールステップから始めて徐々に大物に着手するという方法もありますが、私が最初に取り掛かったのは、「一番物が多い場所」です。
その理由は、片付け終わった後の成果を強く体感できるからです。
物が多い場所は「手間と時間がかかりそう」と、つい後回しにしたくなるかもしれません。しかし、物の取捨選択をし、整理された空間を目にした時の達成感は格別です。
物が多いところは、自分にとって関心のある物が集まっている場所であり、一番気になっているスペースでもあるはずです。いわば“本丸”のような場所だからこそ、その場所を整えて変化を体感することができれば、自分の自信にもなり、そのあとの片付けに弾みが付くと思います。
とはいえ慣れていないと、「自分にとって何が必要なのかわからない」と感じることもあるかもしれません。そういう場合は、家を見回し、気になったところから自由に始めてみてください。
私も最初は、頭で考えるというよりは、とにかく手を動かしてみるという感じでした。慣れていない方は「手放す」「残す」「保留」の三つのボックスを作り、仕分けながら片付けてみるのもいいと思います。
少しずつ続けていくうちに、今の自分にとって「必要な物」「必要ではない物」を判断する感覚が掴めてくるはずです。

収納からすべてを出して、まずは全体像を把握
私にとって一番物が多いところは、台所まわりでした。古いマンションなので収納スペースは狭いのに、鍋や調理道具、カトラリーなどであふれ、吊戸棚もシンク下の収納も、すし詰め状態。
まずは全体を把握するために一度、すべてを出すことにしました。
鍋や調理道具などのカテゴリーごとに棚や引き出しから出して机に並べ、何をどれだけ持っているのかをチェック。いったん全部出すことで、視覚的にどれだけたくさんの物が収納されていたかがよくわかります。

透明の瓶は洗剤入れ。白い袋は生ゴミ入れとして使用
調理道具にどれだけのお金を使ってきたかということを改めて知り、反省する材料にもなりました。さらに、何年も動かしていない物が出てきたり、同じような物がいくつもあったり。
普段作る料理の種類に対して、道具の種類はバランスが取れているのか。全体像を知ることで、取捨選択がしやすくなりました。
それらを見ながら、どんな理由で手に入れたのかを思い出してみると、その多くが、人の持ち物を見て、羨ましく思い手に入れた道具だったり、憧れのメーカーだからと物の本質を見極めずに選んだ物だったり。
消費社会を象徴するように最新の調理家電が出てきたりして、自発的な“ほんとうに好き”という基準で選択された物は意外にも少なかったことに気づかされました。

台所では掃除しやすいステンレス素材が便利
本記事は『ほんとうの豊かさに出合うための9週間』(KADOKAWA)からの抜粋です
〈撮影/メグミ〉
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9週間後、あなたの暮らしと価値観が180度変わる生活哲学
何を手放すかではなく、何を残すか。背伸びしない、凛とした生活が人気のvlogger・動画制作者の深尾双葉さんによる、初の書籍。つい生活の中で埋もれてしまった「ほんとうの豊かさ」に再び巡り合うための1冊です。
「部屋が物だらけでなんだか落ち着かない」「好きな物に囲まれているはずなのに気に入らない」……そんなお悩みはありませんか? やみくもに物を減らすのではなく、自分が本当に好きな物・美しいと思う物にとことん向き合って、何を残すかを決めることで、自然と部屋が変わっていきます。さらに部屋と心は連動しているもの。9週間のうち、前半週(1~5週)で部屋を整え、後半週(6~9週)からは心を整えていくための生活習慣について紹介します。