• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。シニア猫の変化について。

    猫はシニアになると性格が変わる?

    我が家の15歳コンビ、でかおとウン。

    もうすぐ16歳になるふたりに、最近ちょっとした変化がありました。

    それは、甘えん坊に拍車がかかっていること。

    もともと夫のことが大好きで、そばで撫でられるのを待っていた、でかお。最近では夫が2階で仕事をしていると、1階のリビングでぽつりと不安そうに佇みます。そして夫が降りてくると、まるで迷子の子が親を見つけたかのように駆け寄るのです。その姿は愛おしいけれど、「これでは離れられないな」とせつなくもあります。

    画像: 夫をリビングで待つ「でかお」

    夫をリビングで待つ「でかお」

    画像: やっと下りてきた夫になでてもらい至福

    やっと下りてきた夫になでてもらい至福

    一方で、引っ込み思案で甘えるのが苦手だったウンにも変化が。どうやら、でかおを見て学んだのかもしれません。グイグイと夫に寄っていくようになり、気がつけば私の隣にひっそり腰を下ろしていることも。「甘えていいのかな?」という遠慮が、「撫でられたい!」というまっすぐな気持ちに変わってきたようです。

    画像: なでられ待ちの「ウン」

    なでられ待ちの「ウン」

    甘えん坊になる猫たちのための「さみしくない」対策

    甘えん坊な姿はかわいくて、嬉しくて。けれど同時に、もしかすると老化による変化なのでは?と思うと、少し寂しい気持ちにもなります。人間だって、歳を重ねるとさみしさが増すもの。猫たちに、そんな思いをさせたくはありません。

    では、私たちにできることはなんだろう。

    きっとそれは「さみしさを埋めること」ではなく、「安心を重ねていくこと」。

    そばにいるよ、という気配を、毎日の小さな習慣で伝えていけたらと思うのです。

    そんな私たち。いつも、こんなふうに「甘えん坊になったシニア猫と暮らす工夫」をしています。

    ・「そばにいる」を意識する
    撫でなくても、同じ空間で声をかけたり視線を送ったりするだけで安心につながります。

    ・定位置に家族の気配を残す
    着ていた服や布を猫のお気に入りの場所に置くと、家族の匂いで安心できます。

    ・スキンシップの時間を日課に
    朝晩など決まった時間に軽く撫でたり話しかけたりすることで「待っていれば会える」と覚えてくれます。

    ・膝や隣をいつも空けておく
    自分から甘えに来やすいスペースを確保しておくと、猫たちも安心して寄ってこられます。

    ・無理のない遊びを取り入れる
    ほんの短時間でも、猫じゃらしや声がけでコミュニケーションを持つことで孤独感を減らせます。

    ・健康チェックを兼ねる
    甘えん坊の変化が老化のサインである場合も。撫でながら体調をさりげなく確認する習慣を。

    甘えるようになったのは「寂しさ」ではなく、「信頼」が深まった証かもしれません。

    でかおとウンが安心して「もっと甘えていいんだ」と思えるように、これからもそばで寄り添っていきたい……そう思わせてくれる日々の変化です。

    画像: 夫になでられてヨダレが出る「ウン」

    夫になでられてヨダレが出る「ウン」

    ◇ ◇◇ ◇◇


    画像: 甘えん坊になる猫たちのための「さみしくない」対策

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



    This article is a sponsored article by
    ''.