(『天然生活』2024年12月号掲載)
雪深い冬は頼れる道具と光や色の力を借りて
長野県北部、新潟との県境にほど近い信濃町。
「珈琲 占野」の屋号で活動する占野大地さんと、甘味担当の奈菜子さん夫妻は2023年、ここに「珈室(こしつ)」を構え、暮らしの拠点も移しました。
信濃町といえば、1時間で数十センチの雪が積もる日もある、県内でも有数の豪雪地帯。
雪景色に胸打たれたり、食材との出合いに新たなお菓子の発想を得たりと、土地の風土を味わいながらも「厳しい自然の中の暮らしにまだ、戸惑うことがあるのも事実です」と奈菜子さんは話します。

薪ストーブはデンマーク「ヒタ」社の「アンビション」。「むだのないデザインと、窓が大きく火がよく見えるところが気に入っています」
ふだんは木々や小川も見えるリビングの窓も、厳冬期には3分の1以上、雪の中に。
雪かきをしなければ外出もままならない、長い冬を健やかに乗り切るための相棒は、1年でずいぶん充実しました。

煮込み料理に最適な鋳物ホウロウの鍋。熱々の料理が冬の体と心に染み渡る
とくに奈菜子さんが「心を救われた」のは、色や光の「美」を感じる時間。
たとえば薪ストーブは、炎の揺らぎが楽しめるだけでなく、優秀な調理の熱源にもなり、心もおなかも温めてくれる大切な存在。
お気に入りの画材で絵を描くひとときも、「鮮やかな色に力をもらい、励まされました」。

奈菜子さん愛用の、河内洋画材料店の「ビッグ オイル パステル ベイビー」
雪国での日々は、まだ始まったばかり。
「無理をせず、ときに外にも出ながら自分のバランスを見つけていけたらと思っています」
〈撮影/ミズカイケイコ 取材・文/玉木美企子〉
奈菜子(ななこ)
夫の占野大地さんと、珈琲と甘味による茶席のようなコース「珈琲 ノ 席」を主宰。国内外の茶室やギャラリーなどで提供している。2023年に拠点を神奈川県から長野県へと移し、「珈琲 ノ 席」を定期開催している。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです




