• 本をこよなく愛する本屋店主5名の、心に響いた一冊をご紹介。店主のまっすぐな言葉で本の魅力をお届けします。紹介してくれるのは、手仕事と本の世界を静かにつなぐロバの本屋店主・いのまたせいこさん。いのまたさんの心に響いた“この一冊”、今回は『雪の練習生』です。

    いのまたさんが選ぶ“この一冊”
    『雪の練習生』

    心地よい読書体験が味わえる本を教えてくれた、いのまたさん。今回おすすめしてくれたのは、多和田葉子著『雪の練習生』です。

    画像: 『雪の練習生』(多和田葉子著 新潮社)

    『雪の練習生』(多和田葉子著 新潮社)

    サーカスの花形から膝を痛めて事務職に移ったホッキョクグマ「わたし」が自伝を書き始める、というところから物語は始まる。

    そんな突飛な設定でも、多和田葉子の小説は普通にサラリと受け入れて読み進めていける。

    この本はホッキョクグマ三代の物語である。それはそのまま過去数十年のソ連、ドイツ、ヨーロッパ、世界の歴史に重ね合わせられる。それに動物愛護をめぐる問題なども関わってきたりする。

    静かに感動しながら読み進めていくと、いろんな要素が絡み合っているというワケだ。

    純粋なホッキョクグマたちの物語は少し哀しくて、だけどそこには希望やきらめきもある。

    読んだあとしばらくはホッキョクグマたちのことが頭から離れない。

    * * *

    天然生活2025年12月号では、「本屋店主の心に響いた、この一冊」を紹介しています。ロバの本屋・いのまたせいこさんをはじめ、魅力的なお店を営む5名に、歩みを照らしてくれた本を教えていただきました。あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。

    天然生活2025年12月号(扶桑社・刊)

    画像: 『雪の練習生』本を愛する本屋店主おすすめの“心に響いた”この1冊/ロバの本屋・いのまたせいこさん

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    〈文/いのまたせいこ〉

    いのまた・せいこ
    東京で8年間「ROBA ROBA cafe」を営んだのち、山口県に移住。2012年、山間の集落にて元牛舎を改装し、カフェ併設の「ロバの本屋」を開店。店内には、紙ものや生活雑貨、毛糸なども選りすぐられ、展示や編み会も定期的に開催。紙の感触や経年変化を大切にしつつ、手仕事と本の世界を静かにつなぐ場を育む。
    HP:https://www.roba-books.com/
    インスタグラム:@roba_no_honya



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