本をこよなく愛する本屋店主5名の、心に響いた一冊をご紹介。店主のまっすぐな言葉で本の魅力をお届けします。紹介してくれるのは、本と静かに向き合える余白の時間を大切にするtwililight店主・熊谷充紘さん。熊谷さんの心に響いた“この一冊”、今回は『暗闇に手をひらく』です。
熊谷さんが選ぶ“この一冊”
『暗闇に手をひらく』
読み継がれてほしい本を教えてくれた、熊谷さん。今回おすすめしてくれたのは、大崎清夏著『暗闇に手をひらく』です。

『暗闇に手をひらく』(大崎清夏著 リトルモア)
2024年1月1日、能登半島地震が起きた。
大崎清夏さんとつくっていた『私運転日記』という本に石川県の珠洲(すず)が出てくるので、私にとっても珠洲の被害は他人事ではなくなっていた。
気持ちがぐちゃぐちゃなまま翌日から営業を始めた。『私運転日記』の刊行記念で珠洲を思ってライブを開催するが、追い討ちをかけるように、秋に能登を豪雨が襲う。
『私運転日記』の売り上げ20%を義援金として寄付することに決めるが、不甲斐なさが消えることはない。そんなときに刊行されたのが、この詩集『暗闇に手をひらく』だった。
こんなにも心強い言葉は初めてだった。
一節を自分で覚えて持っておいて、不安になったときに口ずさむと安心できた。壁だと思っていたものが窓に変わった。
「想像もつかなかった光景を見て何も持たずに逃げきてきたあなたを下ろした両手は抱きしめる」
* * *
天然生活2025年12月号では、「本屋店主の心に響いた、この一冊」を紹介しています。twililight・熊谷充紘さんをはじめ、魅力的なお店を営む5名に、歩みを照らしてくれた本を教えていただきました。あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。
〈文/熊谷充紘〉
熊谷充紘(くまがい・みつひろ)
東京・三軒茶屋で本屋・ギャラリー・カフェを併設した「twililight」を営む。2011年3月11日の震災を機に会社員を辞め、編集やイベント企画を経て、2022年3月11日に店舗をオープン。選書・執筆・出版を手がけ、本と静かに向き合える余白の時間を空間に反映する。自社で復刊した「体の贈り物」はこの秋重版に。
HP:https://twililight.com/
インスタグラム:@twililight_






