「いつか」の妄想を叶えたいなら動き始めるのは今
いろいろなお店やカードなどのポイントを貯めて賢く利用するという、いわゆる「ポイ活」が苦手です。面倒くさがりやなので、カードを忘れては「ま、いいか」と諦めて、次に同じお店に行った際も「あ、また忘れた!」なんてことがしょっちゅう。
一方几帳面な夫は、コツコツとポイントを貯めるタイプ。そんな夫に言われるがまま、クレジットカードを同じものに替えました。買い物のほとんどをカードで支払うようになると、気がつくとびっくりするぐらいポイントが貯まるようになりました。
それを使って、コロナ直前にはふたりでハワイへ。航空券から宿泊代まですべてポイントでまかないました。国内のリゾートホテルにも泊まることができるので、自分たちではとても泊まれない高級ホテルにご褒美のように行くのも楽しみです。
軽井沢や中禅寺湖畔など、森や水辺のホテルに泊まったら、どこにも出かけずゆっくり過ごします。夕暮れ時や早朝に散歩をするのがいちばんの楽しみ。いい空気を吸いながら、ゆっくり歩いて部屋に戻ると、お茶を入れてベランダで飲んだり……。
そんな時間を過ごしていると、「いつか、こんな森の中に住んで、朝食にパンケーキを焼いて、ゆっくり過ごして」と妄想がムクムクと膨らんできます。人生後半になって、「もし、本当にそんな暮らしがしたいなら、今すぐ動き始めないともう間に合わない」とわかってきました。
でも、仕事もまだまだ続けたい。山の中の一軒家にでも住んで、もう誰かの評価を気にしないで、自分のためだけに時間を使いたい気もするけれど、文章を書いて読んでもらう、というやりがいも手放せない。いったい自分は何がしたいのだろう? とわからなくなってきます。
「好きかも」から「本当にやりたいこと」を探す
いつも「誰かに望まれている私」になるために、頑張り続けてきました。その結果「誰か」の目ばかり気にして、「褒められる私」になるために頑張り、自分の心の中にある「本当にやりたいこと」が見えなくなってしまった。
「これがやりたい。でも、そうするとあれができなくなる」と、「やりたいこと」を見つける度に「でも」や「だけど」をくっつけて、「安定」を優先させ、結局「やりたいこと」が霞んでいってしまいます。
そろそろ、「やりたい」のど真ん中へアクセスしてもいいんじゃないか? そのためには、どうすればいいのだろう? とずっと考え続けているけれど、その方法がわかりません。

じっくり本を読むのも大好きなひととき。でも、仕事でバタバタしていると、細切れにしか読書ができないのも事実。30分間でも「読む」という時間を作ってみたい
思い返せば20代でフリーライターとして仕事をし始めた頃、こんなに一生「書く」仕事を続けるなんて、思ってもいませんでした。「書く」ということが、どういうことなのかなんて、まったくわかっていなかったから。
それでも、雑誌の記事を書いたり、少しずつ自分のエッセイを書くようになって、日々の中で感じたこと、思ったことが、本当はどういうことなのかを分析し、もやもやした思いに輪郭をつけ、言語化するというプロセスが、こんなにも面白いとやっとこのごろわかってきたところ。「書く」ことを理解するまでなんと30年もかかってしまいました。
「これが好き」「これをやりたい」と、わかってから動き始めることができる人なんて、ほんのひと握りなのかもしれません。まずは「好きかも……」という曖昧さから始まって、恐る恐るやってみる中で、少しずつ自分の「好き」を獲得する。
もしかしたら、私が本当にやりたいことは、自分の中からやりたいことを発掘するプロセスそのものなのかもしれないと思います。
▼一田憲子さんの“幸せな暮らし”の記事はこちら
〈撮影/近藤沙菜〉
※本記事は『最後の答えは、きっと暮らしの中にある。』(内外出版社)からの抜粋です。
◆決してひっくり返らない「幸せ」は、いつもの暮らしの中にありました◆
若いころは、何者かになりたいと、仕事の成果やキャリアの成功を気にしていたという一田さん。
人生後半を迎えたいま、誰かの評価で揺らぐ幸せよりも、暮らしのなかにある「決して揺らがない幸せ」に心満たされる瞬間があると気づいたそう。
本書は、一田さんが日々の足元を見つめ直してみて気づいた、ありのままの私で幸せに暮らすための「答え」を綴ったエッセイ集。
変わらない日常のなかにあるささやかな幸せに目を向け、自分らしい生き方を大切にしたくなる1冊です。
【もくじ】
● chapter1 学び
・「負けられる人」になるのも人生後半を生きるコツ
・“ひとり勝ち”では誰もシアワセになれない など
● chapter2 気づき
・自分で泳がなくても、ボートに乗せてもらえばいい
・いつもの暮らしを豊かにするメモの力を再発見 など
● chapter3 言葉
・足を止めて待ち途方に暮れて何かが始まる
・大人の適度なミーハー心が新しい風を起こす など
● chapter4 道具
・今まで着ていた服がに合わなくなった日がきたら
・食べ物は「点」で味わうか「流れ」で味わうか など
● chapter5 時間
・どんなに忙しくても静かな家時間を失わない
・“勝ち負け”の舞台から降りれば心から楽しめる など
一田憲子(いちだ・のりこ)
1964年京都府生まれ兵庫県育ち。編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などで活躍。企画から編集、執筆までを手がける『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(ともに主婦と生活社)を立ち上げ、取材やイベントなどで全国を飛び回る日々。近著に『小さなエンジンで暮らしてみたら』(大和書房)、『 父のコートと母の杖』(主婦と生活社)、『すべて話し方次第』(KADOKAWA)がある。著書多数。暮らしのヒント、生きる知恵をつづるサイト「外の音、内の香」主宰。
https://ichidanoriko.com/








