(『天然生活』2020年9月号掲載)
いつでも、だれでも、いらっしゃい
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
ここは週に一度、木曜日だけオープンする「いつだれキッチン」 お昼の開店に向けて準備が進められています。
スタッフはすべてボランティア、日によって手伝う人は変わりますが、ときおり冗談がとび出すような和やかな空気はいつも通り。

いつだれキッチンを支えるのは、さまざまなバックボーンをもった人たち。マニュアルなどなく、ひとりひとりができることをする。食堂ってこういうもんでしょ、と引っ張る経験者がいないので、みんなが手さぐり。おおらかな枠組みだからこそ、いい雰囲気が醸し出され、それが、利用する人たちの心まで届く
スタートは2019年4月、大皿に盛って各人で料理を選ぶビュッフェ形式です。

なにはともあれ、みんなでごはんを食べましょう
決まったメニューはなく、値段もありません。寄付で寄せられた食材で献立を考えて、料理をつくるのです。
商売ではなく、すべてがボランティアで運営され、サービスを提供する人と、サービスを受ける人ではなく、「みんなでつくって、一緒に食べよう」
来る人拒まず、だれでもどうぞ。

食事のお代は投げ銭でびんの中へ。経済的に苦しい人がいるかもしれないので、お金のある人が入れてくれればいいそう
だから食堂ではなくキッチンがふさわしいというのが名の由来です。
とはいえ、家賃や光熱費、調味料や足りない食材は購入することになり、それらの費用捻出のために、お代は投げ銭制にして頂いているのだそう。
主宰するのは福祉の事業所を運営する中崎とし江さん。ほかに例を見ない場所づくりを思い立ったのは、ひとりの女性の居場所をつくりたいとの思いからでした。

チャレンジ精神あふれる中崎さん(右)と、突飛なアイデアを思いつく猪狩さん。開始当時、いわき市地域包括ケア推進課だった
「最初からこうしたい、ああしたいというのがあったわけじゃなく、結果としてこうなっただけで。彼女がのびのびできる場があったらハッピーにつながるんじゃないかな、そんな場所がどこかにないのかな。あっそうか、本人を変えるんじゃなく、周りの環境を変えるしかないよね」
当時、市役所職員で福祉担当だった猪狩僚さん、社会福祉士の吉田郁子さんらと何度も話し合いを重ね、ようやくこの場所に開所できたのは1年後でした。
ここを支えるスタッフボランティアは介護や障がいなどの福祉の専門家が多く、「ごはんを食べに来た人とのなにげない会話のなかから悩みをすくい上げることもあるからすごい」と猪狩さんはいいます。

また、吉田さんは「人それぞれの思いで、ここにごはんを食べに来る。どんなふうに受け取ってくれるかはその人にまかせて、私たちはおいしくつくって、おいしく食べてもらえたらそれでいいの」と笑います。
障がいへの理解とか、だれにでもやさしい社会などとゴチャゴチャという前に、ここで一緒にごはんを食べましょうというシンプルな思いが3人に共通するのです。
人は食べることで満たされる部分がある、それは確かなこと。
いつだれkitchen(キッチン)
福島県いわき市平上荒川字桜町1-1
営業日:毎週木曜日 12:00~14:00
@itsudare_kitchen
<撮影/落合由利子 取材・文/水野恵美子>
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



