• 絵本作家の松本春野さんに、人生を変えた3冊の本について伺いました。ふと開いたページがもたらしてくれた、転機や気づき。そんなエピソードや作品を聞きました。
    (『天然生活』2025年2月号掲載)

    視野を広げてくれた、“腹が立つ”読書体験

    「自分を気持ちよくしてくれる本だけでなく、ときには否定されたり、打ちのめされたりする読書も大切です」。

    そういって、松本春野さんが紹介してくれたのは『女と文明』です。60年以上前に書かれた本書は、女性が経済的に自立し、家庭内の役割から解放されることが、文明の進歩に不可欠と論じています。

    画像: 松本さんの人生を変えた3冊

    松本さんの人生を変えた3冊

    「著者の物言いが率直すぎて、気持ちがざわつくところも多いですが、両親を見て感じていたことや、自分が家庭を築いてから抱える漠然としたモヤモヤを、明確に言語化してくれた本です。

    〈自分の人生を喪失してまで、どうして『妻』であらねばならないのだろうか。〉という一文が象徴的です」

    耳の痛い指摘も多かったからこそ、目を背けていたことにも気づかされたといいます。

    「私は家事が好きじゃないのに、素敵に暮らしたい気持ちは強く、そのギャップで無理をしていたんです。人生に多くを求めすぎていたのかもしれないなと。この本を読んで、“素敵”を手放し、自分と家族の心地よさを大事にするようにしたら、とても楽になって。そういう意味でも、家庭のあり方や人生を見つめ直す、学びと発見の多い本でした」

    松本さんの人生を変えた本3冊

    窓ぎわのトットちゃん

    画像: 黒柳徹子著 いわさきちひろ絵 講談社

    黒柳徹子著 いわさきちひろ絵 講談社

    黒柳徹子さんの幼少期を描いた自伝的物語。絵は、松本さんの祖母であるいわさきちひろさん。

    「どんな子も祝福される存在と示してくれ、生きる指針のひとつを授けてくれた特別な本。ちひろの絵の力を知るきっかけにもなった1冊です」

    女と文明

    画像: 梅棹忠夫著 中公文庫

    梅棹忠夫著 中公文庫

    半世紀以上前に賛否両論を呼んだ、先見的な女性論、家庭論を収録。

    「上野千鶴子さんの著書で知り、猛烈に刺さりました。女性蔑視と感じる表現もありますが、その時代背景ごと味わってほしいです。私たちを救う言葉がちりばめられています」

    注文の多い料理店
    -宮沢賢治童話集1-(新装版)

    画像: 宮沢賢治著 太田大八絵 講談社青い鳥文庫

    宮沢賢治著 太田大八絵 講談社青い鳥文庫

    「子ども時代は絵本で親しみ、大人になって児童書で再読しました。賢治の紡ぐ美しい言葉と物語は、読むたびに自分のなかで新しい解釈が生まれて考えさせられます。娘と一緒に読むことでも発見があり、何度も出合い直して楽しんでいます」

    松本さんの読書習慣

    画像: 絵本作家・松本春野さんの「人生を変えた本」3冊。ときには自分を否定されることも大切。視野を広げてくれた“腹が立つ”読書体験

    小学3年の娘さんと一緒に読書をすることが多いそう。

    「娘は私よりずっと読書家で物知りです。私が読んだ本を娘が読み、娘の児童書を私が読んで、本の共有もしています」



    〈撮影/山田耕司 取材・文/熊坂麻美〉

    松本春野(まつもと・はるの)
    絵本作家、画家。主な絵本の著作に、盲目の男性と子どもたちの交流を描いた『バスが来ましたよ』(由美村嬉々・文 アリス館)、黒柳徹子さんの戦争体験を絵本化した『トットちゃんの 15つぶの だいず』(柏葉幸子・文 講談社)などがある。絵本や子育てにまつわる講演活動も精力的に行っている。
    https://matsumotoharuno.com/

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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