• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。16歳のシニア猫の性格の変化。

    16歳のシニア猫が最近甘え上手になってきました

    我が家には、ウンという16歳のおばあちゃん猫がいます。

    交通事故にあっていたところを保護した子です。

    そのせいか、少し怖がりで引っ込み思案。人間を恐れているわけではありませんが、どこかに距離がありました。

    若いころは、甘えたい気持ちはありそうなのに、どう近づけばいいのか分からない——そんな遠慮を感じる猫でした。

    それが、最近、少しずつ変わってきました。

    年齢を重ねると、人も猫も、素直になるのかもしれません

    ウンはここ数年で、ずいぶん甘えん坊のおばあちゃんになりました。

    最近の流行りは、リビングのローテーブルの上です。

    私たち夫婦がごはんを食べながら、ゆっくり話をしている場所。そこが団欒の場所だと、いまさら気づいたようなのです。

    弱くなった足で、よいしょ、と体を持ち上げて、ひょっこりテーブルに上がってきます。

    「ウンもいるじょ!」

    そんな顔で、会話の輪の中に加わります。

    そして、そのあとは決まって夫の前に陣取ります。

    撫でてもらうためです。

    夫は猫を撫でるのがとても上手で、ウンもそれをよく知っています。頭から背中へ、ゆっくりと手をすべらせると、目を細めて、うっとりとした顔になります。

    画像: ごはんが終わってもテーブルから降りない

    ごはんが終わってもテーブルから降りない

    画像: 夫の猫吸い

    夫の猫吸い

    「ここにいていい」と安心して過ごす猫の姿が愛おしい

    ただし、この時間はなかなか終わりません。

    私たちがごはんを食べていても、撫で始めたら最後。ウンが満足するまで続きます。途中でやめると、じっと見上げてくるのです。

    「まだだじょ!」そんな顔で。

    だから夫は、ときどき箸を止めて撫で続けます。ごはんは少し冷めてしまいますが、まあいいか、と思うのです。

    若いころは遠慮していた猫が、16歳になってようやく「ここにいていい」と思えたのかもしれません。

    今日もウンは、よいしょ、とテーブルに上がってきて、私たちの団欒に加わります。

    そして夫の手を独占して、満足そうに目を細めています。

    その時間が、なんとも愛おしいのです。

    画像: 喉の下が一番気持ちよさそう

    喉の下が一番気持ちよさそう

    シニア猫との暮らしの小さなコツ

    ・ゆっくり甘える時間をつくる
    シニア猫は、甘える時間が少し長くなります。急がず撫でてあげると、安心した顔を見せてくれます。

    ・登りやすい場所を用意する
    足腰が弱くなってきたら、椅子や台、ペット用ステップを置いて小さな段差をつくってあげると安心です。高い場所にも、ゆっくり上れるようになります。

    ・お気に入りの場所を尊重する
    テーブルの上や椅子の上など、その子なりの“好きな場所”があります。少し不思議でも、安心できる場所として見守ってあげたいものです。

    ・年を重ねるほど甘え上手
    若いころは遠慮していた猫が、年を重ねてからぐっと甘えるようになることもあります。その変化も、シニア猫との暮らしの楽しみです。

    画像: テーブルの隅に乗るウン

    テーブルの隅に乗るウン

    気づけば、テーブルの上にもう一匹。

    夫の手はしばらく止まり、私たちのごはんは少し冷めます。

    それでも、こうして同じ場所で過ごす時間があることが、いちばんのごちそうなのかもしれません。

    ウンは今日も、満足そうに目を細め、私たちの表情もでれっでれになるのです。

    ◇ ◇◇ ◇◇


    画像: シニア猫との暮らしの小さなコツ

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



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