• 吉祥寺に、店主のセンスが隅々まで宿る人気のカフェがあります。店主は横尾光子さん、77歳。そのスタイリッシュな佇まいの裏に、夢を手放さずに長い介護の歳月を歩み続けた日々がありました。心が折れそうなときも、彼女が守り続けた「4つのルール」は、忙しい日々に自分を後回しにしがちな女性が自分を取り戻すための、小さなヒントになるかもしれません。

    介護の日々のなかで灯し続けた「好き」への思い

    画像: 2025年に再始動したお店の前でパチリ。シルバーのベリーショートに映える黒のワンピースは自身が手がけるブランド「クロロ」のもの

    2025年に再始動したお店の前でパチリ。シルバーのベリーショートに映える黒のワンピースは自身が手がけるブランド「クロロ」のもの

    吉祥寺のカフェ『お茶とお菓子 横尾』の店主・横尾光子さんが纏う、肩の力が抜けたおしゃれな空気感には、世代を超えて多くの人が心惹かれてしまいます。

    その魅力の裏側に、実は「28年間で5人を介護し、見送った」濃密な歳月があったことをご存じでしょうか。

    驚くのは、その長い日々の傍らで、カフェを開き洋服ブランドを手がけるなど、「好き」の情熱を灯し続けてきたこと。

    介護の真っ只中、それでも自分らしくあるために横尾さんが守り続けた「4つのマイルール」をご紹介します。

    画像: 「ひとりの静かな時間を楽しめる」がお店のコンセプト

    「ひとりの静かな時間を楽しめる」がお店のコンセプト

    画像: 月の満ち欠けに合わせたハーブティー(新月茶・満月茶)が人気。シンプルな器は、石井啓一さんの作品

    月の満ち欠けに合わせたハーブティー(新月茶・満月茶)が人気。シンプルな器は、石井啓一さんの作品

    自分らしくあるために。横尾さんが守り続けた4つのルール

    横尾さんのマイルール1
    好きな服を着る

    画像: 手元には琥珀の大ぶりのリングを重ね付けて

    手元には琥珀の大ぶりのリングを重ね付けて

    病院へのお見舞いにも、大好きな「コム デ ギャルソン」の黒いワンピースで出かけていたという横尾さん。

    真っ黒な服で現れる姿に、病院のスタッフはぎょっとしていたそうですが、それでも「自分の機嫌は、自分で取らなきゃ」と、心地よくいられることを手放しませんでした。

    「やっぱり、服には力がありますから」

    横尾さんのマイルール2
    意識して、にこっとする

    画像: 「考えすぎない、というかすぐに忘れちゃうのは特技ね」と、ビックスマイル

    「考えすぎない、というかすぐに忘れちゃうのは特技ね」と、ビックスマイル

    あるとき、入院中のお父さんから「お前はいつも怖い顔して入ってくるな」と言われてはっとしたそうです。気構えると、表情はこわばる。それに気づいてから、意識して口角を上げるようにしたといいます。

    「些細なことだけど、それだけで空気がやわらぐし気持ちも変わるんですよ。単純ね(笑)」

    横尾さんのマイルール3
    少し引いて眺める

    画像: カフェの窓際席。通りを眺める時間が心を整えてくれる

    カフェの窓際席。通りを眺める時間が心を整えてくれる

    つらいことも、一生懸命なことも、まっすぐ向き合いすぎると心が擦り減ってしまう。だから「いま私はこういう状況にいるんだな」と、少し距離をとって見つめる目をもつこと。

    認知症で変わっていく母親の姿も、「ほほう、今度はこうきたか」と人間観察をするような気持ちで見るようにしていたといいます。

    横尾さんのマイルール4
    カフェでのひとり時間

    画像: 名物のお汁粉は、甘酒の風味とやさしい甘さ。本格的に和菓子を学んだ横尾さんの自信作

    名物のお汁粉は、甘酒の風味とやさしい甘さ。本格的に和菓子を学んだ横尾さんの自信作

    介護している最中も、よくカフェに通っていたという横尾さん。

    物理的に現実から離れ、好きな空間に身を置くこと。本を読んだり、ぼんやりしたり。そんな時間が自分を取り戻させてくれたといいます。

    77歳、「なりたい」より「やりたい」を生きる

    画像: 「幼い頃から、あれやこれや楽しい未来を妄想してました。いまもそんな時間が好き」

    「幼い頃から、あれやこれや楽しい未来を妄想してました。いまもそんな時間が好き」

    「介護は終わる。そして自分にも終わりがある。だからこそね、前向きに」

    その言葉どおり、介護を見送り終えた横尾さんは、股関節の手術を経てもなお「もう一度お店に立ちたい」という直感から、昨年にお店を再始動。

    今度はジャズを歌うという夢まで持ち始めました。

    「“なりたい”んじゃなくて、ただ“やりたい”だけなの」

    シンプルなその言葉が、じんわり胸に響きます。

    今回、この横尾さんのお話を紹介していたのが、『This Day Magazine(街と、介護と、コーヒーと。)』。インスタグラムやYouTubeでは、横尾さんの朗らかな笑い声や、インタビューの空気感もまるごと配信されています。

    ▶動画のフルストーリーは こちらから


    〈撮影/砂原 文 取材・文/綾田純子〉

    横尾光子(よこお・みつこ)
    1948年生まれ。家族の介護と並行しながら、50代未経験で東京・吉祥寺に「お茶とお菓子 横尾」を開業。多くのメディアで紹介される人気店に。現在は島根と東京を行き来しながら、両拠点でカフェを展開。主宰する大人服ブランド「クロロ」では「がんばりすぎないけれど品がある」スタイルを提案する。
    インスタグラム:@yokoomitsuko @ocha_okashi_yokoo_chloro

    訪れた人:
    綾田純子(あやた・すみこ)
    1969年生まれ。編集者・ライター。東京でフリーランスとして、インテリア、旅、ライフスタイルを中心に雑誌や書籍の編集・制作に携わった後、故郷・岡山へ。高齢の両親の介護をしながら活動を続ける中で、介護する人の暮らしにも、好きなものや美しいもの、ユーモアを。そんな思いから、Webマガジン「This Day Magazine 〜街と、介護と、コーヒーと 〜」を立ち上げる。岡山在住。
    インスタグラム:@sumiko_a



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