(『天然生活』2025年5月号掲載)
花と花びんが出合って生まれる「化学反応」を楽しんで
大ぶりの華やかな花びんに、ていねいに花を活けていく市村美佳子さん。「完成形だけを目指して、活ける時間そのものをじっくり味わわないのはもったいないと思う」と話します。
「1本花びんに入れただけで表情がらっと変わる、その瞬間がとても楽しいんです。私はよくお茶を飲みながら活けています」

都内のヴィンテージマンションに構えるアトリエ兼住まい。個性的な花びんに活けたのはラナンキュラスとパンジー。普段は仕事で使った花や枝ものを飾ることも
市村さんのアトリエ兼住まいにあるのは、形も色も個性的な花びんばかり。市村さんにとって、花を活けることの楽しさのひとつは「花と花びんを出合わせ、その化学反応を楽しむこと」にあります。
「個性が立っている=力のある花びんは、どんな花をどんなふうに活けても、その花を美しく見せてくれます。調和であれ、違和感であれ、花と花びんが互いに影響し合って何かが生まれるのが楽しくて。無色透明のシンプルな花びんだと化学反応が起きにくいので、かえって難しいんです」

好きなアートのそばに置かれた花台にクロモジを活け、互いの存在感を引き立て合う。「花台のように、植物の居場所を部屋の中にひとつでもつくっておくと便利です」
気持ちよさそうにしている花の姿に、元気をもらえます
母親が大の花好きで、毎日欠かさず家に花を飾っていた姿を見て育ったという市村さん。「切り花には根付きの花とはまったく違うエネルギーがある」といいます。
「空間に花が1本あるだけで風通しがよくなり、息がしやすくなるんです。とりわけ切り花には、人に寄り添い、気持ちを温めてくれる力もある気がします」

玄関にも花を欠かさない。「外から帰ってきたときに目に入ると楽しいし、涼しい場所なので花が長持ちします」
自分のために飾る花には、正解や不正解はない。頭で考えず、その日の体調や気分に応じて、どんな色、どのくらいの量が心地よいかを感じ取りながら花を選ぶ。それが、市村さんが大切にしている日常の花とのつきあい方です。
「活け方にしても、バランスや色の組み合わせなどは取るに足らないこと。それよりも、花がきれいな水に活けられて、生き生きと気持ちよさそうにしていたら、それだけでごちそうです。そうした花の姿に元気をもらうことで、日々をすこやかに暮らせる気がします」
〈撮影/橋本裕貴 取材・文/嶌 陽子〉

市村美佳子(いちむら・みかこ)
フラワーデザイナー。「緑の居場所デザイン」主宰。東京・南青山のアトリエで花教室を主宰するほか、イベントや店舗の花装飾などでも活躍。インスタグラム:@midorinoibasho
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです




