元野良猫たちがとにかくよく食べる!
わが家には、元野良猫がたくさんいます。保護したばかりのころは、驚くほど軽い子もいました。
抱き上げると、骨の形がそのまま手に伝わってくる。背中はごつごつしていて、お尻も小さい。成猫なのに、「こんなに細くて生きていたのか」と思うくらい、骨と皮だけの子もいます。
きっと、おなかいっぱい食べられない日が、長かったのでしょう。
だから、家に来たばかりのころは、とにかく食べます。びっくりするほど食べます。
「誰にも取られないよ」「明日もあるよ」
そう言いながらごはんを出しても、勢いは変わりません。
そして、こちらも弱いのです。もっとおなかいっぱいにしてあげたい。もう飢えなくていいって、わかってほしい。そんな気持ちで、つい、おかわりを出してしまいます。

SNSで「マルッキー」と呼ばれたぽっちゃりの「ヨナ」
おかわりに応え続けた結果、やってくるのは
結果、何が起きるか。
おでぶです。顔だけ小さいのに、体がトドみたいになります。
「あれ、この子こんな体型だった?」と、ときどき二度見します。
しかも、苦労してきた子ほど、「もう動きません」という強い意思を感じます。
遊びに誘っても、寝転がったままです。前足だけ、ちょい、ちょい、と動かします。
「こちらとしては参加しています」。そんな顔です。いや、動いてはいる。たしかに動いてはいるのですが、圧倒的に省エネです。
たまに本気で走る日もあります。けれど、そのあと必ず食べます。結果として、痩せません。
わが家では、「運動したからおなかが空いた」という、非常に理にかなった流れが完成しています。
でも、それでいいのではないかと、私は思っています。

これでも走ってます
「食べられる」ことは、生きる力そのもの
もちろん健康のために、太りすぎには気をつけます。ごはんを調整したり、遊び方を工夫したり、定期的に体重も測ります。
ただ、痩せていることだけが正解でもない気がするのです。
これまで見送ってきた猫たちのことを、ときどき思い出します。
猫は、亡くなる前になると、やっぱり少しずつ痩せていきます。
もちろん急な別れもあります。でも、長く一緒に過ごした子たちは、最後、少しずつ体が細くなっていきました。
その姿を見るたびに、「食べられる」ということは、生きる力そのものなのだと感じます。
だから、若いころ、ぽってりしていた子たちの最期が、あまり「かわいそう」に見えなかったのかもしれません。
頬に丸みが残っていて、おなかに少しだけやわらかさが残っていて。それはきっと、その子がちゃんと「満ちていた時間」を生きた証だったのだと思います。
もちろん、太ればいいという話ではありません。
ただ、たくさんがんばって生きてきた子が、安心して眠り、おなかいっぱい食べて、「今日は走らなくていいです」という顔をしているのを見ると、私は少しほっとするのです。
野良だったころ、この子たちは、たぶん、そんなふうには眠れなかったから。

元祖おでぶ、猫エイズと白血病の「あい」
猫も人も、楽しく続ける“ゆるダイエット”のコツ
・まずは“安心太り”を受け入れる
保護猫は、「食べられる安心」を覚えると、一気にふっくらすることがあります。それは、ようやく飢えなくていいと知った証でもあります。
・走らなくても、参加していればえらい
寝転んだまま猫じゃらしを追う日もあります。でも、“遊ぶ気持ち”があるだけでも十分。省エネ参加型でも、ちゃんと楽しんでいます。
・運動後のおかわりに注意する
せっかく走ったあとに、達成感で多めに食べる猫は意外といます。わが家では“がんばったで賞”が多すぎて、ときどきプラスマイナスゼロになります。
・痩せるより、“元気そう”を大切に
数字だけでなく、よく寝て、食べて、毛づやがよくて、ご機嫌かどうか。その子らしく元気に暮らせていることが、いちばん大事だと思います。
・ぽっちゃりには、幸せの記憶が入っている
もちろん健康管理は必要です。でも、ふくふくした背中を見るたび、「この子、ちゃんと満腹を知れたんだな」と、少しうれしくなる日があります。

幸せが詰まった「でかお」のフカフカのおなか
夜、猫たちがそれぞれ好きな場所で眠っています。丸くなった背中は、どれも少しだけ、やわらかそうです。
昔は、誰かに追われながら食べていたかもしれない子たち。明日のごはんがあるか、わからなかった子たち。
その子たちがいま、安心しきった顔で、おなかを見せて眠っています。
私はその姿を見るたび、「ちょっと丸いくらいで、ちょうどいいのかもしれない」と思うのです。
少なくとも、この家では。食べることと眠ることを、もう誰にも遠慮しなくていいのですから。

遊びたい気持ちがあるんだけど
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咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」






