• 全国のつくり手を訪ね歩き、日本の手仕事の魅力を発信する手仕事キュレーター・関根大地さんの“手仕事案内”。今回は、お気に入りの器を長く大切に使うための金継ぎのすすめについて。金継ぎ体験でよみがえったお気に入りの器も紹介していただきました。

    手仕事が好きだからこその不安と、金継ぎとの出合い

    僕が手仕事のものを好きになり、作家さんの器を少しずつ迎え始めたころ、ずっと心のどこかで気になっていたことがありました。

    それは、「割れてしまったらどうしよう」という不安です。

    画像: 割れてしまった器

    割れてしまった器

    画像: 手仕事が好きだからこその不安と、金継ぎとの出合い

    作家さんがひとつひとつ手がけた器を暮らしのなかで使う時間はとても豊かでうれしいもの。

    でもその反面、大切に思うからこそ、欠けたり割れたりしてしまうことが怖くて、購入をためらうこともありました。

    そんなときに出合ったのが、「金継ぎ」です。

    画像: 僕が金継ぎしている様子。運営している「ngumiti蔵前」にて、金継ぎワークショップを開催しました

    僕が金継ぎしている様子。運営している「ngumiti蔵前」にて、金継ぎワークショップを開催しました

    金継ぎで修復した、大好きな器たち

    金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を漆で修復して、金や銀などの粉で仕上げる日本の伝統的な技法。

    「壊れたから終わり」ではなく、「直して使い続ける」という考え方に触れたことで、僕の器との向き合い方は大きく変わりました。

    今回は、まず僕自身が金継ぎをして使い続けている、お気に入りの器を3つ紹介させてください。

    画像: 僕が金継ぎしたお気に入りの器たち

    僕が金継ぎしたお気に入りの器たち

    ①馬渡新平さんの器

    画像: 真鍮粉で仕上げした馬渡新平さんの器

    真鍮粉で仕上げした馬渡新平さんの器

    ヒビ粉引と呼ばれる、白い肌に貫入(こまかなヒビ模様)が入る技法が特徴で、その表情は一点一点異なります。

    手元にあるのは、長い時間かけて選んだ1点です。丸いこの形がとにかく使いやすく愛用しています。

    ②吉沢寛郎さんの飯碗

    画像: 内側は黒漆、外側は錫で仕上げした吉沢寛郎さんの器

    内側は黒漆、外側は錫で仕上げした吉沢寛郎さんの器

    益子の個展に訪れた際に迎えた、思い入れのある器。まだ器を好きになりたてのころでしたが、吉沢さんの器にすっかり魅了され、車を走らせて益子まで会いに行きました。

    器を見るたびに、そのときのわくわくした気持ちがよみがえってきます。

    ③「CURIOUS CLAY」のマグカップ

    画像: 真鍮粉で仕上げした「CURIOUS CLAY」のマグカップ

    真鍮粉で仕上げした「CURIOUS CLAY」のマグカップ

    学生のころ、インスタグラムで見かけたカフェで使われていたこのマグカップに心を奪われました。実際にお店まで見に行ったものの、そのときは販売しておらず、購入できませんでした。

    それでもずっと心に残っていて、数年後に販売会が開かれると知ったときは迷わず足を運びました。

    器選びに正解はないけれど、自分が「好きだ」と感じた直感は案外間違っていない。そんなことを教えてくれた、思い出深いマグカップです。

    欠けやヒビさえも愛おしく

    画像: 左から真鍮粉、錫、黒漆の仕上げ

    左から真鍮粉、錫、黒漆の仕上げ

    傷跡を隠すのではなく、その器が歩んできた時間として受け入れる。そんな金継ぎの考え方に触れてから、欠けやヒビさえも愛おしく感じるようになりました。

    修復を終えた器には、以前とはまた違った魅力が宿っているように思います。

    そして実は、金継ぎは必ずしも金だけで仕上げるわけではありません。仕上げに金や銀、真鍮の粉を使うこともあれば、漆だけで仕上げる方法もあります。器の雰囲気や好みに合わせて選べるのも、金継ぎの面白さのひとつです。

    本漆と簡易、 自分のスタンスで選ぶ金継ぎの楽しみ方

    僕自身は数年前に本漆金継ぎに初挑戦しました。

    漆を乾かしながら少しずつ工程を重ねていくため、完成までには半年以上。待つ時間も含めて、とても豊かな体験でした。

    一方で、先日初めて簡易金継ぎのワークショップにも参加しました。

    合成接着剤を使いながら短時間で仕上がり、初心者でも気軽に体験できる簡易金継ぎ。本漆金継ぎとはまた違った魅力があり、「まずやってみたい」という方には、とてもよい入口だと感じました。

    画像: 割れた箇所に接着剤を塗るところ

    割れた箇所に接着剤を塗るところ

    本漆金継ぎは、器と長くつきあうための伝統技法を学ぶ楽しさがあります。

    簡易金継ぎは、まず自分の手で器を直す喜びを気軽に味わうことができます。

    どちらがいい・悪いということではなく、もし体験するのであればご自身のスタンスに合わせて選択してみたらよいかなと思います。

    「割れた器を捨てずに使い続ける」という考え方は共通。その点こそが、僕が感じる金継ぎの大きな魅力です。

    金継ぎが教えてくれた、新しい“器との向き合い方”

    器が割れてしまっても捨てずに残しておく。そして金継ぎによって、傷跡さえも愛おしい景色へと変わっていく。

    そんな体験は、僕の器選びの価値観を変えてくれました。

    画像: 金継ぎした器たち

    金継ぎした器たち

    以前は、「割れやすそうだからやめておこう」「素敵だけれど高価だし……」と、本当に欲しい器を諦めることもありました。

    けれどいまは、もし欠けたり割れたりしても、金継ぎという選択肢がある。そう思えることで、心から惹かれた器を迎えられるようになりました。

    もしご自宅に欠けた器や割れてしまった器が眠っていたら、ぜひ一度金継ぎを体験してみるのもよいかと思います。

    きっと器だけでなく、暮らしを見る目も少し変わるはずです。



    画像: 金継ぎが教えてくれた、新しい“器との向き合い方”

    関根大地(せきね・だいち)
    手仕事キュレーター。“日本の伝統産業や手仕事をより身近に”という想いのもと、全国のつくり手を訪ね歩きながら、その魅力をインスタグラムで発信する。東京・蔵前にある店舗兼ショールーム「ngumiti蔵前」を藍田留美子さんと共同運営。また、アパレルブランド「UNFOLK」の運営サポートや和紙ブランド「SIWA」とのコラボアイテム制作にも携わる。
    インスタグラム:@daichi.sekne
    ngumiti蔵前:@ngumiti_kuramae



    This article is a sponsored article by
    ''.