猫の上手ななで方
まずは猫に選ばせる
いきなり上から手を伸ばすと、怖がる子もいます。まずは手を低い位置で差し出し、においをかがせて、猫のほうから近づいてくるのを待ちます。来なければ、今日はその気分ではないということ。無理に追いかけないのが一番です。
最初は顔まわりから
多くの猫が好みやすいのは、頬、あごの下、耳の後ろ、額など。猫が自分で家具や人の手にすり寄せる場所は、気持ちいいポイントであることが多いです。短い時間から始めて、表情を見ながら続けます。
背中は毛並みに沿って
背中をなでるときは、頭からしっぽの方向へ、毛並みに沿ってゆっくりと。力加減は猫によって違います。そっとが好きな子もいれば、しっかりめが好きな子もいます。のどを鳴らす、体を押しつける、目を細めるようなら、気持ちいい合図です。
おなかは“特別許可制”
おなかを見せているからといって、必ずなでていいとは限りません。信頼しているから見せているだけで、触られるのは苦手な子もいます。おなかをなでるのは、その子が本当に好きだとわかっている場合だけ。少しでも足で蹴る、しっぽを振る、体を固くする様子があれば、すぐにやめます。
しっぽ、足先、ひげまわりは慎重に
しっぽや足先、ひげの根元は敏感な場所です。嫌がる子も多いので、無理に触らないほうが安心です。爪切りやケアの練習以外では、猫が気持ちよさそうにしている場所を中心になでます。
“もうやめて”の合図を見逃さない
しっぽを大きく振る、耳が横や後ろに倒れる、皮膚がぴくぴくする、急に手をかむ、体をよじる、目つきが変わる。これらは「そろそろ終わり」のサインかもしれません。もっとなでたい気持ちをこらえて、そこでやめると、次の信頼につながります。
シニア猫はやさしく、ゆっくり
年をとった猫は、関節や皮膚が敏感になっていることがあります。昔好きだったなで方でも、いまは負担になる場合があります。力を入れすぎず、体勢を変えさせすぎず、猫が楽な姿勢のままなでてあげます。
毎日、好みは少しずつ違う
猫にも気分があります。昨日は甘えん坊でも、今日はひとりで寝たい日かもしれません。「この子はこれが好き」と決めすぎず、その日の様子を見ながら手を止めたり、続けたりするのが、一番のなで上手です。
猫をなでる手は、ただの手ではありません。
「ここにいるよ」
「怖くないよ」
「今日も大事だよ」
そんな言葉にならない言葉を、そっと伝えるものなのだと思います。
そして猫のほうもまた、のどを鳴らしたり、体を預けたり、ときにはかぷっと甘噛みしたりしながら、返事をしてくれます。その小さなやりとりが、今日という日を少しやわらかくしてくれる。だから私は、明日もまた猫たちに聞きながら、手のひらでそっと話しかけるのです。
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咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日』(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」





