• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。100円ショップのファンデーションスポンジでつくるおもちゃなど、猫が夢中になった身近な遊び道具を紹介します。

    高価なおもちゃより夢中になったもの

    猫と長く暮らしていると、おもちゃで悩むことがあります。

    最初のころは、猫じゃらしひとつにも感動しました。羽根がついたもの、鈴が鳴るもの、キラキラしたリボンがついたもの。お店で見つけるたびに、「これは喜ぶかもしれない」と、つい手に取ってしまいます。

    けれど、猫たちも年々、目が肥えていきます。

    「あ、それ知ってる」
    「前にも見た」
    「いまは気分じゃない」

    そんな顔をされることも増えてきました。

    わが家には10匹の猫がいます。みんな、もと保護猫で、年齢も性格もそれぞれ。静かに寝ているのが好きな子もいれば、こちらが少しひもを振っただけで、全身で飛びかかってくる子もいます。

    そうなると、おもちゃは消耗品です。

    最近の猫のおもちゃは、かわいくて、よくできています。でも、ひとつひとつがけっこう高価です。

    それなのに、うちの子どもたちの激しい遊び方では、羽根はむしられ、ひもはよれ、棒は折れ、あっという間に壊れてしまいます。

    楽しそうに遊んでくれるのはうれしい。けれど、壊れたおもちゃを見ながら、「また買わないと」と思うことが、少し負担になる日もありました。

    そんなとき、たまたま見つけた記事で知ったのが、100円ショップのファンデーションスポンジを使った猫のおもちゃでした。

    半信半疑で、ひと袋30個入りのものを買ってみました。小さなスポンジにひもをつけて、いつもの猫じゃらしのように振ってみます。

    すると、驚くほど食いつきました。

    軽くて、ふわっと跳ねる感じがいいのでしょうか。床を滑らせても、空中で揺らしても、猫たちの目が一斉に丸くなります。前足でちょいちょいと触る子。くわえて持っていこうとする子。低い姿勢で、じっと狙う子。

    画像: どっちが捕まえる?

    どっちが捕まえる?

    画像: おもちゃを見つめる一(いつ)

    おもちゃを見つめる一(いつ)

    画像: 若い子たちもランラン

    若い子たちもランラン

    高価なおもちゃではなく、100円ショップのスポンジに、こんなにも夢中になるなんて。

    少し拍子抜けして、でも、うれしくなりました。

    ファンデーションスポンジはやわらかいので、猫の体にも床にもやさしいです。ぶつかっても大きな音がしないので、こちらも安心して遊ばせられます。壊れたり汚れたりしても、気軽に取り替えられます。

    画像: 運動神経は鈍いうちの子たち

    運動神経は鈍いうちの子たち

    画像: 動きに合わせて視線釘づけ

    動きに合わせて視線釘づけ

    もちろん、ひもを使うおもちゃなので、遊ぶときは必ずそばで見ています。かみちぎったり、飲み込んだりしないように、遊び終わったらすぐ片づけます。

    それでも、この「気軽につくれる」ということは、猫と暮らすうえで、とても大きな助けになると感じました。

    猫の暮らしを豊かにするものは、必ずしも特別なものでなくていいのかもしれません。

    猫と暮らす家には、買ったものだけではなく、見つけた楽しみがたくさんあります。

    そして、その楽しみを一番上手に見つけるのは、いつだって猫たちなのです。

    ◇ ◇◇ ◇◇


    画像: 空き箱の爪とぎカバー

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ、大阪在住。作家、家族療法カウンセラー。夫と10匹の元保護猫と暮らす。心の病や生きづらさを抱えるなか、不治の病をもつ一匹の猫との出会いをきっかけに、「命は、生きているだけで愛おしい」ということを知る。以来、生きづらさのなかにある小さな希望を、ノンフィクションや小説、エッセイに綴りつつ、NHKの福祉番組への出演、全国での講演などでも活動。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日』(KADOKAWA)など。

    note:https://note.com/sakiseri

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