料理人の経験を生かし、第57次南極観測隊の調理隊員に
南極地域観測隊の調理隊員として、約1年間、南極で暮らした渡貫さん。
ものにあふれ、出たごみは清掃員の方が回収してくれる日本とは反対に、南極では、限られた物資でやりくりし、ごみは自分たちで持ち帰らなければならない。
そんな生活が、渡貫さんの「ごみ削減」や「環境」に対する意識を大きく変えました。
もうひとつの気づきが、「足るを知る」ことの大切さ。自分にちょうどいい量を把握できるようになったことで、以前よりごみを減らせるだけでなく、災害時の備えも予測しやすくなったのだそう。

第57次南極観測隊の調理隊員・渡貫淳子さん
現地調達ができない南極。何をどれだけ持っていく?
「南極に私物を持っていくことはできますか?」
もちろん持っていけます。
南極地域観測隊の越冬隊は、1年間を超えて現地で生活します。日本なら、ふだん使っているものが足りなくなったとき、欲しければ買いに行くことができますが、そうはいかないわけで。
あれやこれやと、1年分の私物を持ち込みます。
日本を出発する2カ月くらい前から、私物を段ボールに詰め込み始め……と、ここで大きな壁にぶち当たりました。
そもそも、何をどれだけ持っていけばいいんだ?

配布された段ボールに思い浮かんだものを詰めていく
組織から「用意すべき物資」のリストが配布されたのですが、そのほとんどは「適宜」と記されています。量については各自で判断しなさい、ということなのでしょうが、はて?
歯磨き粉って何本必要?
ティッシュは何箱?
バスタオルは何枚あればいいんだ?
経験者に教えてもらったり、仲間と相談したりしながら準備を進めてはみたものの、途中でなくなったら買い足せないと思うと、つい多めに用意してしまいました。
最終的に、中ダン(大中小の3サイズのまんなか)といわれる段ボール10個分の私物を南極に持ち込みましたが、実際に使ったのは、そのうちの6箱分。結局、4箱分は必要がなかったという結果に。
その経験から、自分が何をどれだけ、どれぐらいの期間で消費するのかを把握できたのです。
消費量を知ることは、災害時の備えにも役立つ
日本で生活していると、家族と共用するものも多く、一人当たりの消費量を把握するのは難しいですが、“家族全体の消費量”を知っておくことは、災害時の備えにも役立ちます。
たとえば、社会情勢が不安定になると、なぜか買いだめされがちな「トイレットペーパー」。
私が実際にやっているチャレンジはこちら。
トイレットペーパーを新しいものに変えた日に、ホルダー上部にマスキングテープを貼って「使い始めた日付」を書くんです。

果たして、家族全員で1ロールが何日もつか?
こうすると、家族が1ロールを何日で使い切るかが一目瞭然。
さらには、スタートした日にちが見えることで「1ロールを少しでも長く使いたい!」という心理が働きます。毎回だと家族にプレッシャーをかけてしまうことになりかねないので、このチャレンジをやるのは年に数回です(笑)。

実は無意識に使っているものがたくさんある
1ロールを何日で使い切るかがわかると、いま自宅にあるトイレットペーパーで何日しのげるかが予測できます。
予測できれば、ストックの量もコントロールしやすいですし、「あと何日分はあるから、今日は買わず、次回に持ち越そう」なんてこともできるじゃないですか。
そして、災害時には「わが家はあと何日分はあるから、1ロールくらいなら、ほかの人に譲ってあげられるかも」と、支え合いの気持ちも生まれるかもしれません。
「足るを知る」
自分の消費量を把握できたら、なんだかちょっと日々の買い物が楽になりました、とさ。
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▼渡貫淳子さんの“ごみを減らす暮らし”の記事はこちら
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▼防災に役立つ“南極生活の知恵”の記事はこちら
〈文/渡貫淳子〉
渡貫淳子(わたぬき・じゅんこ)

第57次南極地域観測隊の調理隊員。1973年青森県八戸市生まれ。調理の専門学校を卒業後、同校に就職。結婚後、出産を機に退職するも、その後も家事・育児をこなしながら調理の仕事を続ける。30代後半に南極地域観測隊の調理隊員への夢を抱き、3度目のチャレンジで合格。昭和基地史上2人目の女性調理隊員(民間人では初)。南極でよくつくっていた「悪魔のおにぎり」をモデルに、某コンビニチェーンが商品化したことでも注目される。現在は南極での経験を元に、フードロスや環境問題、防災、男女共同参画などをテーマにした講演活動を行う。近著に『私たちの暮らしに生かせる 南極レシピ』(家の光協会)がある。
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