• なかなか踏み出せずにいただれかの助けになりたいという想い。最初の一歩を、私たちと一緒に。今回は、就労継続支援A型B型事業所 TOMOS company Ltd.を訪ね、障がい者の居場所と社会との接点を「刺し子」でつくる取り組みを拝見しました。
    (『天然生活』2025年6月号掲載)

    働くのは障がいや難病を抱えた幅広い年代の利用者

    栃木県宇都宮市にある「TOMOS company」は、就労継続支援A型、B型事業所の運営を目的に2015年に設立されました。

    取材に伺ったのは「障がいや難病がある人が雇用契約を結んだうえで一定の支援がある職場で働くことができる福祉サービス」のA型事業所。現在30名が利用しており、事業所には毎日25名ほどが通います。

    利用者は20代前半から60代までと幅広く、精神疾患や発達障がい、知的障がい、身体障がいなど、抱えていることはさまざま。そんなみなさんが行っているのは工程のひとつ「刺し子」の作業です。

    画像: 下絵の描かれた布をスタッフから受け取り刺し子を始める。「縫うのがうまくなってうれしい」「自分で工夫して縫っています」と話してくれた利用者も

    下絵の描かれた布をスタッフから受け取り刺し子を始める。「縫うのがうまくなってうれしい」「自分で工夫して縫っています」と話してくれた利用者も

    針目の「ゆらぎ」は個性。それこそが手仕事のよさ

    「刺し子は日本の伝統的な美しい工芸でありながら、だれにでもできる『隔たりのない』技術なんです。縫い目が粗くなったり、まっすぐに縫えないというのはみんな同じ。縫い目が曲がっていることを私たちは『ゆらぎ』と呼んでいて、それは人それぞれの針目の個性。逆にいえば、それこそが手仕事の価値であると思っています」

    そう話してくれたのは取締役で商品の企画・営業を担う山中知博さんです。

    画像: 福祉で大切なことは「傾聴」と話す山中さん。話し合いながら作業の進め方を決めていく

    福祉で大切なことは「傾聴」と話す山中さん。話し合いながら作業の進め方を決めていく

    たまに「障がいがある方は特別な才能があってアーティスト性があるのでしょ?」とか「集中力に長けているから刺し子を利用者にお願いしているの?」と聞かれることもあるそうです。

    でも、それもやはり人それぞれ。そういう方もいればそうでない方ももちろんいるそうです。

    「製品のために決められた図案をお願いすることと並行して、自由に好きな図案を考えて、自分らしく刺し子をしてもらう時間もつくっています。そこで才能あふれる図案をつくったり、優れた配色を見せてくれる利用者もいます。でも基本的には、刺し子という単純な作業を繰り返すことで、自分を見つめる時間になったり、針を早く進めるやり方をその人なりに工夫したり、利用者の成長につながってほしいという想いで仕事をお願いしています」

    画像: 事業所の至るところに飾られている刺し子の作品。ジャパンブルーの古布「BORO」に針目が映える

    事業所の至るところに飾られている刺し子の作品。ジャパンブルーの古布「BORO」に針目が映える

    TOMOSでは、利用者の一般企業などでの過去の苦い経験を考慮して、明確な締め切りやノルマをつくることはしていません。

    でもただ居心地がいい場所であるだけではなく、無理のない範囲でチャレンジしてほしいという想いももっています。

    「仕事ではありますが、あくまで福祉であるということは常に意識しています」



    〈撮影/小禄慎一郎 構成・文/飯作紫乃〉

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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