(『天然生活』2025年9月号掲載)
住まいづくりは生活効率優先。光熱費は下がり、暮らしは快適に
肩書きは「暮らしかた冒険家」。
「未来の“ふつう”をいまつくる」をモットーに、日常生活のなかの違和感をなくすよう、暮らし方のアップデートを試みる伊藤菜衣子さん。
今回、お金の取材を受けることになって、結婚するときに夫にいわれた言葉を思い出しました。「菜衣子ちゃんはさ、お金を貯めることはできないかもしれないけれど、使い方のセンスはすごくいいんだよな〜」
お金をたくさん貯めることが「センスがいい」ともてはやされがちないま、「貯まらないけどいい」とはこれいかに!? 愛知県岡崎市で暮らす伊藤さんに会いに行ってきました。

リビングの顔ともいえる大きなゴムの木は生き生き。「観葉植物は育ちすぎていると置ける場所が限られるので売れづらいみたいで、ちょっとお手頃な金額になっていたんです」。置くスペースさえあればおすすめなのだとか
取材当日は、全国的に「今年一番」の気温を叩き出した猛暑日。大きな窓があり、天井の高い一軒家は、エアコンの効きが弱そうなイメージですが、まあなんと涼しいこと!
聞けば、約90㎡の2階建てでエアコンは1台のみ。それで家の隅々まで快適な温度に保っているから不思議です。
電気代は一般的な一軒家に比べると少なく、とても経済的。これはこの家の断熱効果のたまもの。7年前に家を建てるときに、断熱等級は6以上と、徹底的にこだわりました。

生活効率を考えて、キッチンはオープンにして家の中央にレイアウト

大理石の天板はまろやかなピンク色
「子どものころに住んでいた札幌の家と、その後引っ越した神奈川のマンションを比べて、断然、札幌のほうが冬、暖かかったな〜と思って」
その後、高断熱住宅で快適にエコに暮らしている人との出会いもあり、自身も断熱の知識を極めて、発信することに決めました。熊本の築百年の古民家、札幌の家のセルフリノベーションを経て、東岡崎で一から家づくりをしました。
壁に断熱材を入れ、窓は樹脂サッシにして、断熱性を高め、あらゆる工夫を詰め込み、夏は涼しく、冬は暖かな家が完成。
通常より費用はかかりましたが、その分、生活効率がぐんと上がりました。コストも下がった光熱費でそう遠くなく相殺できるはず。

三角屋根の角度は耐震性能を担保しながら天井を高くする工夫
「とりあえず」で買わず、「ケチ」になる
小さなエネルギーで快適に暮らす。その快適性に支えられ、家でする仕事のアウトプットも増え、家族全員の暮らしの満足感もアップしました。
そういうところにお金は惜しまず使い、「とりあえず」で買いがちなあらゆるものは、財布のひもは固く。
「たとえば家具などは、自分でつくるか、不要な人からもらえないか?と動きます。日用品もお気に入りを決めてむだ買いはしないように」。こういうところが、伊藤さんのお金の使い方の「センス」なのです。

友人宅で不要になった桐ダンスを引き取った。なんと天地をひっくり返し、周りを白くペイントして食器棚に
〈撮影/林 紘輝 取材・文/鈴木麻子〉
伊藤菜衣子(いとう・さいこ)
クリエイティブディレクションや編集、ウェブ制作、コピーライティングなど、多岐に活動。「100万人のキャンドルナイト」や、坂本龍一氏のソーシャルメディアでの社会実験などにも参加。編集に『あたらしい家づくりの教科書』、共著『これからのリノベーション 断熱・気密編』(ともに新建新聞社)。
https://bouken.life/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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