• 『天然生活』が注目する方に、お話を聞く人気シリーズ。 「瀬戸内国際芸術祭」「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」のディレクターを務める、北川フラムさんを訪ねました。
    (『天然生活』2017年5月号掲載)

    質問

    地方を元気にする芸術祭を仕掛ける喜びは何ですか?

    自然のなかで、五感を使って体験するアート

    青々とした棚田に点在する、農作業をする人々の彫刻。廃校となった小学校内を埋めつくす、流木や木の実。

    新潟県の自然豊かな里山を舞台にした、3年に一度のアートフェスティバル「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は、2000年にスタートし、来年、第7回を迎えます。

    国内外のアーティストが参加するこの芸術祭は、展示作品だけでなく、パフォーマンスや食といった多様なジャンルが土地や人々と呼応しあいながら展開する、まさに「お祭り」です。

    第1回から総合ディレクターを務める北川フラムさんは、ほかにも「瀬戸内国際芸術祭」をはじめ、各地の芸術祭のディレクターを務め、全国を飛びまわっています。

    「土地によって風土や文化が違うので、当然、作品や芸術祭のかたちもさまざまです。ただし、アートを通じて人々と地域がつながること、地域の住民自身に自分の土地を再発見してもらい誇りをもってもらうこと。根っこにある、この思想は共通しています」

    穏やかな口調ながら、エネルギッシュなオーラを感じさせる北川さん。学生時代に没頭した仏像の研究と、いまの仕事は、根底でつながっているといいます。

    「仏像は、参道、伽藍、お堂などの環境と影響しあっている。アートも、自然のなかで見ると、季節や時間帯などによって受ける印象は違ってきます。五感を使って、作品を見ることができるんです」

    とにかく、『面白いから、やろう』といいつづけた

    第1回の来場者数が約16万人だったのが、2015年の6回目では50万人以上。いまでこそ、アートを通じた地域おこしのロールモデルとされる「大地の芸術祭」ですが、開催までの道のりは、平坦ではありませんでした。

    「地元の人からは猛反対を受けましたよ。突然、よそ者がやってきて、現代アートなんて訳のわからないものにお金をかけるなんて、とんでもないって。でも、とにかく、『面白いから、やろう』といいつづけたんです」

    かつては日本屈指の米どころであり、絹織物の産地だったものの、合理化の波のなかで過疎化、高齢化が進んでいた越後妻有。北川さんの原動力となったのは、「これまで日本を支えてきた、この地域のおじいちゃん、おばあちゃんたちの笑顔が見たい」という、シンプルな思いでした。

    地元の人々を説得するために、4年半で開いた説明会は約2000回。何度も現地に足を運び、風土や文化を理解し、人々と根気よく対話する。その時間と労力は膨大です。

    「それでも、反対者と同じ土俵に立ったほうが、絶対にいいんです。わかりあえる範囲内でやっていたら、本質的な問題に出合えないし、そもそも面白くない。だれだって、未知の人やものに対して、最初は怖く感じるものです。でも、自分とは違う人と一緒に何かをしてみたい。その気持ちは、人間がもつ本能だと思います」

    画像: いつも持ち歩いているという、手帳とチョコレート

    いつも持ち歩いているという、手帳とチョコレート

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    <撮影/ニシウラエイコ 取材・文/嶌 陽子>

    北川フラム(きたがわ・ふらむ)
    1946年、新潟県高田市(現上越市)生まれ。東京藝術大学卒業。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」「瀬戸内国際芸術祭」などの総合ディレクターを務める。長年の文化活動により朝日賞(2017年)、文化功労者(2018年)等受賞。著書に『美術は地域をひらく:大地の芸術祭10の思想』(現代企画室)、『ひらく美術』(ちくま新書)など。
    https://www.artfront.co.jp/

    撮影/ニシウラエイコ
    フォトグラファー
    webサイト
    http://www.eikonishiura.com
    Instagram
    https://www.instagram.com/eikonishiura/
    @eikonishiura

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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