(『天然生活』2017年7月号掲載)
植物と大地のエネルギーを暮らしにチャージする
宇都宮檀さんが、リビングに鍋や漏斗、ホースをつないだ不思議な道具を運んできました。カセットコンロに火をつけてしばらくすると、部屋中に、ローズゼラニウムの甘い香りが広がります。
「簡易型の芳香蒸留器です。鍋の中に水とハーブを入れ、蒸気を氷で冷やすと蒸留水ができるんですよ。オレガノや月桃、クロモジの葉など、四季折々の植物でつくっています」と教えてくれました。
兵庫県の芦屋駅から車で15分ほど。有馬温泉へと抜ける山の途中にある自宅は、周囲を散策するだけで自然の恵みがいっぱい。
「7年前に、ここへ引っ越してきました。私ね、森のなかに住みたかったんです。でも、毎日、出勤する主人にとっては利便性も大事。ここは、山と都心が近くて、ほどよいんですよね」
インディアンの信仰も、日本の神道も、『あるがままを受け入れる』という根っこは同じ
そう語る宇都宮さんは、思春期のころ、だれもが抱く「自分って何だろう?」という問いに対して、宇宙や八百万の神のような民俗学的な「信仰」のなかに答えがあるかも?と、さまざまな本を読んでいたのだといいます。
「自分のルーツを探るのが面白かったんですよね。そんななかで知ったのは、インディアンでも、日本の神道でも、『あるがままを受け入れる』という根っこは同じってことでした」
大学時代に、「お守り的に身に着けられたら」と彫金でアクセサリーづくりを始め、卒業後は、注文を受けたり、教室を開くようになったり。ところが、当時から体が弱く、すぐに風邪をひいたりし、また、花粉症がひどく、頭痛持ちだったそう。
小さなころから、おばあさまが畑でつくった野菜を食べて育った宇都宮さん。スーパーで買う野菜はおいしくない、と感じ、20代後半から、自然食を意識し、食生活を少しずつ変えはじめたら、体が変わってきました。
「そのころ、太極拳を始めて。それから大好きだったお酒が、なぜか一滴も飲めなくなったんです」と笑います。
周りに体に詳しい人が多くなり、瞑想や骨盤体操、コンブチャなど、話を聞いて、やってみて、実感して……と、体のための習慣がひとつ、ふたつと増えていきました。
『できない』理由を見つけてブレーキを踏んでしまわないように、体をきちんと整えておく
「人間は、無理をしたり、背伸びをしたりせず、ありのままにまっすぐに生きていると病気ってしなくなるんだな、とわかりました」と宇都宮さん。
いつの間にか、あんなにひどかった花粉症も収まり、風邪もひかなくなって、体の調子がよくなってきたそう。
「私にとって『元気でいる』習慣とは、常に軽やかな自分でいるためのもの。やりたいことが見つかったときや、だれかに誘われたとき、『できない』理由を見つけてブレーキを踏んでしまわないように。体をきちんと整えて、パッと風に飛び乗ることができる自分でいたいですね」
宇都宮檀さんの7つの習慣(1〜3)
01 芳香蒸留でハーブの力を活用
植物の教室を主宰する宮城・仙台在住の及川久実さんが、震災後に電気を用いず短時間でコップ1杯の水をつくるためにつくった簡易蒸留器(※トップの写真)。それを応用し、植物の香りやエキスを抽出できる。鍋に水とハーブを入れ、シリコン製のホースと漏斗をセット。水蒸気を氷で冷やすという仕組み。香りを楽しんだり、蒸留水は飲んだり。化粧水としても利用できる。
02 穏やかな心で、お茶のおもてなし
お客さまがいらしたら、ささっと、お茶を点てて出迎える。少しずつ集めてきた器のなかからその方に合った一点を選び、季節のお菓子とともに、おもてなしを。お点前をすることで、心地よい緊張感によって気が引き締まり、静かな気持ちになることができる。
03 一日15分の骨盤体操で体を整える
出産後、自然療法家の富田しょうさんに、体を整えるコアフロー体操を習った。両足を肩幅に開き、骨盤が立つように少し膝を曲げて、両手を広げて左右に体をねじる。これで骨盤まわりの筋肉がゆるむそう。「インナーマッスルが鍛えられて疲れにくくなります」
元気な人の7つの習慣 CURIO 宇都宮檀さん(後編)へ ⇒
<撮影/辻本しんこ 取材・文/一田憲子>
宇都宮 檀(うつのみや・まゆみ)
「CURIO」の名で、金や銀を中心に、身にまとうもの、生活に彩りを加えるものを制作。
http://curio-live-design.com/
※トップの写真について
この日、入れたハーブは、兵庫・丹波の畑で摘んできたローズゼラニウム。香りで心も体も目覚めるよう
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです