(『天然生活』2014年11月号掲載)
おいしい紅茶を生み出す基本
起きてから、最初に取りかかるのは、お湯を沸かすこと。自分や家族が飲む紅茶を淹れるために。それが大西さんの朝の時間です。
「まず一杯目は自分のために淹れて、キッチンで飲みます。そのあと、家族の分も淹れながら朝食をつくったりしますね」
アッサムをストレートで、というのが定番。一杯ができ上がるまでには、「待つ」時間があります。お湯が沸くまで、カップが温まるまで、茶葉を入れてからの3分。
その間、今日の予定を考えたり、前日の楽しかったことを思い出したり、茶葉が広がっていく様子をただ眺めたり……。
「立ち止まれる大事な時間。それに、毎日、同じように淹れても、おいしいと感じる日もあれば、なんか違うな、という日もあるんです。その日の体調や心の状態がわかるバロメーターです」
茶葉の味は、待つからこそじんわり出てくる
さまざまな国の茶葉を取り寄せ、お湯の温度や蒸らす時間を試し、おいしい紅茶とは何かを探究しつづけ、15年。大西さんは、「teteria(テテリア)」という名で卸や教室を開き、紅茶を広める活動をしています。
アトリエにはたくさんの茶葉が並び、ビーカーやはかりなどがあって、研究所のよう。紅茶を淹れてくれる様子を見ていると、「待つ」という行為がいかに大切かがわかります。
「『待つ』ことで、茶葉のもつ味を引き出してあげるんです。目安は3分ですが、それ以上でもいい。時間によって、味が強くなったり、渋みが出たり、すっきり感が増したり、茶葉の個性もさまざまなんです。いつも飲んでいる朝の紅茶が、特別なものになるかもしれませんよ」
沸騰したお湯を使うこと。いい茶葉を選ぶこと。そして、きちんと待つこと。それが、おいしい紅茶を生み出す基本です。
「朝は忙しいかもしれませんが、紅茶を味わうだけでなく、淹れる行為も楽しんでもらいたいです。ほら、きれいでしょう?」
そういいながらうれしそうにじっと見ていたのは、お湯の中でゆらゆらしながら、ゆっくり開いていく茶葉でした。
こんなとき、どうしたらもっとおいしく淹れられますか?
いま家にある紅茶をどうしたらいいか、もっと紅茶を楽しむにはどうしたらいいか……。よりおいしく味わうコツを、大西さんが教えてくれました。
Q 正しい保存方法は?
A 密閉できる缶や袋を使いましょう。
茶葉の敵は湿気です。空気に触れないよう、中ぶた付きの缶や、パウチタイプの袋に密閉しましょう。冷蔵庫に入れると、室温との変化で結露が発生してしまいます。密閉容器に入れたら冷暗所に置いて。
Q ティーバッグで淹れるときは?
A ぜいたくにふたつ使ってミルクティーに。
市販のティーバッグの利点は、手軽さ。ただ、茶葉がお湯の中で広がりにくいので、たっぷり使って濃く仕上げるのが、おすすめです。ふたつ以上使ってお湯を注いで紅茶をつくり、牛乳を加えてミルクティーにしましょう。
Q 香りや渋味が苦手だったとき。
A 水出しアイスティーがおすすめです。
茶葉が好みではなかったときは渋味を抑え、適度に香りを楽しむ方法として、アイスティーにしましょう。茶葉に冷水を注ぎ冷蔵庫に4〜5時間おき、氷入りのグラスに注げばおいしくいただけます。
Q 最低限の道具を教えてください。
A ティーメジャースプーン、茶こし、ポットと、時間を計るものを。
茶葉をきちんと量るためにはティーメジャースプーンが必要です。雑貨店などで、400円程度で購入できます。あとは、ポットや、ふたのできるサーバー、茶こし、時間を計る道具や混ぜるマドラーも。
Q 茶葉の選び方がわかりません。
A 茶葉の形状をよく見て、好みを探しましょう。
Q もっと紅茶のことを知りたい!
A 歴史や淹れ方を紹介する紅茶本を。
下右は、老舗「ティーハウス・ムジカ」店主・堀江敏樹さんの著書。インドのチャイを徹底取材した本。真ん中は、紅茶の歴史から淹れ方までの情報満載の一冊。左は、お茶に関する伝説や文学、料理を美しい写真とともに紹介した本。
朝の紅茶は“待ち”が大切。基本の4つ「ストレートティー」「ミルクティー」「ハーブティー」「煮込みミルクティー」の淹れ方へ ⇒
<撮影/有賀傑 取材・文/晴山香織 イラスト/ミヤタチカ>
大西 進(おおにし・すすむ)
紅茶を中心とした茶葉の卸販売と教室を行う「teteria」を主宰。近著に『はじめての紅茶』(ミルブックス)がある。
http://teteria.shop-pro.jp/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです