(『天然生活』2015年11月号掲載)
『天然生活』2012年10月号「ものへの想いを育てる、買い物ノート」で取材をさせていただいた、主婦の金谷操(かなやみさお)さん。どんなものを、どこで、幾らで買ったか、簡単なメモとイラストに記したノートは45年目に突入しました。
今回は、物を大切にしている金谷さんの暮らしを見せてもらうべく、ご自宅へ伺いました。
最初に通されたリビング兼ダイニングは驚くほどすっきりしていて、必要最低限のものだけが置かれています。
細長いテーブルの上にはペンやはさみなどの文房具と読書用のペーパーウエイト。壁や腰高の棚には時計と、かごだけ。
「ダイニングテーブルでは、ごはんを食べたり、封筒をつくったり、本を読んだり……。必要なものを持ってきて、使い終わったらまた元に戻す感じかしら」
「見える化」するための工夫を楽しむ
では、ノートに綴るほど買い物したものはどこへ?と疑問が浮かびます。
収納を見せてもらうと、小上がりになった和室に収納棚があり、壁で仕切られた奥にあるのがクローゼット。雑誌の切り抜きファイルや雑誌も、夫婦それぞれの洋服も、きちんと収まっているうえ、ひとつひとつラベリングまでされています。
たとえば洋服は、夫婦でハンガーの色を変え、これまた夫婦で色分けされたタグが付いています。そのタグにはアイテム名、ブランド名と特徴が明記。さらに、クローゼットの脇の小さな引き出しには、つくりためたタグが入っていました。
使う場所の近くに置いておけば、すぐにラベリング作業ができるというわけです。
「見えない場所がある、何が入っているかわからなくなるのが嫌なだけなんです。夫も把握できるから、あれどこ?といわれることがなくて楽ですよ」
一方、ファイルはというと、雑誌の切り抜きや、行きたいお店のカード、自作の洋服の型紙までもが、同じA4サイズにきちんと収まっています。
実は、この形に落ち着くまでには、失敗もありました。
「行きたいお店のページをスクラップブックに貼り付けると、たった一ページの情報を見るためにノート一冊を持ち歩くことになりますよね。それならと、切ったままで箱や引き出しに小分けしたこともあったけれど、整理しにくく、ひと目でわからない。何かいい方法はないかとずっと考えていて」
試行錯誤の末に落ち着いたのが、このリング式のファイル。必要な書類だけを取り出して持ち運べるうえに、不用になったものは処分できる。足したり引いたりできるから便利だといいます。
どんなサイズの紙ものも、折ったり切ったりしてA4にそろえれば、見た目もすっきり。「一目瞭然」という言葉がまさにぴったりです。
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書類は同サイズのファイルに収納
本棚の半分はファイルスペース。「地図・店」「食(素材別)」「取り寄せ・定番」と分けた雑誌の切り抜き類のほか、夫婦の医療関係の書類、家電の説明書や保証書も分類。「アスクル」でそろえたファイルに入れ、整理しやすく、必要なときにすぐ取り出せて便利。
クローゼットは中身を見える化
シーズン中の洋服は、ほとんどをハンガーで吊るし、出し入れしやすく。カバーをかけている洋服には、すべてきちんとタグを付けているので、ひと目で中身がわかります。季節外のものは防カビ・防湿効果のある茶箱に収納し、衣替えのときに入れ替え。
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一目瞭然ぶりは、洋服やファイル類にとどまりません。キッチンも然り。
調味料は、強い色やデザインのラベルをはがし、必要に応じて、ラベルプリンターでつくったシールを貼り付けています。
冷蔵庫にある密閉容器にも、常備菜の名前をラベリング。さらに、ご主人が飲む焼酎を詰め替える瓶には、 “spirits are this line” というラベルを貼っています。
「焼酎はパックのまま食卓に出していたんですが、あまりに味気なくて。瓶に移したらすっきりして、飲む量が見えることで飲み過ぎもなくなり、一石二鳥(笑)」
思いついたら、まず、やってみる。金谷さんは、その労力をまったく苦に思っていない様子。むしろ、楽しんでいるのです。
「どうしたら使いやすくなるか考えるのが好きなんです。ここにひっかけたらいいかも、と思いついたら、まずやってみる。そうすると、よりいい解決方法がみえてきて、さらに工夫する。失敗してもまたやり直せばいいし。うまくいくと本当にうれしいものなんです」
不便はほったらかしにせず、自分でなんとかしてみる。そんな気持ちが伝わってきます。
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液体の量も、物の重さも見える化する
ご主人が飲む焼酎は、お気に入りの瓶に詰め替えます。ラベルを貼ったラインが、一日に飲んでいい量。その位置まで毎日、焼酎を補充。折りたたみ傘にはグラム数がペタリ。「荷物を軽くしたくて、折りたたみ傘を量ってみたの。せっかくだから数字を貼ってみようと」
自分の色を決め、シーツも区別
シーツや枕カバーなどのリネン類は、角にギンガムチェックの布を縫い付けています。青がご主人、赤が操さん。同じシーツでも、小さなひと手間をかけておけば、しまうときにも使うときにも区別できて便利。シンプルなシーツのワンポイントにもなります。
使いたいときにすぐに使える工夫
帽子やバッグなどは吊るして収納するのが金谷さん流。出かけるときにさっと手に取れ、しまうのも楽ちん。S字フックはもちろん、洗濯ばさみにひと工夫を施したり、キッチン用のマグネットバーを取り付けたり、既成概念にとらわれずに柔軟に取り入れています。
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「小さな工夫が暮らしやすさを生む」・どこに何があるか、ひと目でわかる「一目瞭然の家」へ ⇒
「暮らしに自分らしさを加えるアイデア」・どこに何があるか、ひと目でわかる「一目瞭然の家」へ ⇒
<撮影/石黒美穂子 取材・文/晴山香織>
金谷 操(かなや・みさお)
20代は医療関係の雑誌編集を経験。結婚後はジャズ喫茶経営を経て、再び商業関係の機関誌編集に。5年前に仕事を辞め、現在は自宅の一角でフリーマーケットや手づくり展などを開催している。
石黒美穂子(いしぐろ・みほこ)/撮影
フォトグラファー。料理、インテリア、旅行などライフスタイル系をメインに活動中。2016年より東京・目黒区のセレクトショップ:MIGO LABO ディレクターも務める
インスタグラム
https://www.instagram.com/ishiguromihoko/
MIGO LABO
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※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです