「趣味は、暮らし」と笑う、料理家・横山タカ子さん。日々、保存食をつくり、運針をし、庭の手入れをする、四季とともにある日常を、自分流に、自由に楽しんでいます。それは、遊び心に溢れ、同時にとても美しい。そんな信州の季節に寄り添った、横山さんの四季の暮らしを、ご一緒に、ぜひお楽しみください。今回は、料理にも大活躍の「薪ストーブ」の話を伺います。
(横山タカ子・著『信州四季暮し』より)
夫の転勤であちこちまわる途中、今の家を新築しました。ちょうど昭和の終わりごろです。
薪ストーブはそのときからのおつきあい。ストーブの上では、やかんはもちろん、ゆっくり煮炊きする鍋も置きます。
おでんやカレー、そして、四つ割りにした白菜の蒸し焼きなどは、ストーブ任せでおいしい仕上がりに。
30年近く使っているクーザンスの鍋での焼きりんごや焼き芋も、上に置くだけですが、それはおいしい。鍋と薪の火は、私の右腕かもしれません。
煮豆には、少々火が強く、ちょっと合わないのが残念ですが。
薪はもっぱら、ご近所や知り合いから、りんご、杏、柿、梅などの剪定した枝をいただいています。これらを寸法に合わせて切るのは夫の役目。2階の煙突点検場所は、ちょっとした乾燥室にもなります。
ストーブの火がおき状態になると、網にのせて秋刀魚を焼くこともありますし、鮭や鰤ぶり、原木しいたけに大根と、季節の食材を炭火焼きにすることもあります。
冬になると、火が恋しく、炎を見るだけで落ち着くのは、幼いころから囲炉裏に親しんでいるからでしょうね。私にとって薪ストーブは、現代版囲炉裏といったところでしょうか。
<撮影/本間 寛>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。長野県の特徴でもある、野菜をたっぷりと使った保存食は「適塩」で作り、季節の食材は手をかけすぎず、素材を生かしてシンプルに食べることを信条とする。地元の農作物を広める活動にも尽力。大の着物好きでもある。