• 『天然生活』にも度々ご登場いただいている布作家、山中とみこさんは、専業主婦、ワンオペ育児、介護などを経て、大人の普段着のレーベルをスタートした方です。発売中の著書『時を重ねて、自由に暮らす』には、65歳になる現在に至るまでの暮らし、仕事、家族のことなどが綴られていて、これからの人生を楽しむためのヒントがいっぱい。本に書かれたエピソードなどから一部を抜粋して紹介します。今回のテーマは、「40代ではじめた現在の仕事」です。
    ※ 写真は、自宅の近くに借りている作業所にて、ミシンを踏む山中さん。

    49歳からはじめても、遅くなかった

    本のタイトルは、『時を重ねて、自由に暮らす』。

    「自由」という言葉が入っていますが、著書の山中とみこさんは、手放しで自由を謳歌してきた人ではありません。

    その時々で、娘、妻、母という自身の役割を大切にしながら、子育てや介護に向き合ってすごし、歳を重ねるごとに、自由な時間を広げていきました。

    40代の終わりに、大人の普段着のレーベル「CHICU+CHICU 5/31(ちくちく さんじゅういちぶんのご、以下チクチク)」をスタート。服づくりやデザインについて、学校で学んだことも、勤めた経験もないままに、自己流ではじめたそうです。

    65歳になった今も、現役で服づくりを続けている山中さん。チクチクがすでに17年目を迎えたことについて、本の中で以下のように語っています。

    「49歳からの遅いスタートだったせいか、いつまでも駆け出し気分でいましたが、意外に経験を積んでいたことに驚いています。その歳から始めても、続けていればちゃんと仕事にできる。ぜんぜん遅いスタートではなかったのだと思いました」

    自分の「好き」を続けていれば、いつか形になる

    山中さんは子どもの頃からおしゃれが大好きで、着るものに対するこだわりは人一倍強かったそうです。でも、まさか自分が服のデザインを仕事にするなんて思ってもみなかったと、10代の頃を振り返ります。

    「服のデザイナーやスタイリストの仕事に憧れていたけれど、そんなカタカナ職業は、警察官だったお堅い父に理解してもらえるはずがありません。はなからあきらめて、その夢を口に出すこともせず、大学で福祉を学びました」

    なりたい職業はあきらめたものの、「せめて東京に出たい」という願いを叶えたくて、故郷の青森から上京し、首都圏の大学に入ったのだそうです。

    どんな時でも、「できることは何か」と考えるのが、若い頃から一貫している山中さんのモットー。

    その後は結婚して、ふたりの男の子を授かり専業主婦に。家庭に入っていると、少しだけ社会から切り離されたような気持ちにもなりましたが、食を大切にするため援農活動に参加したり、住まいを好みに変えていったり、市販品に満足ができなくて子ども服を手づくりしたり……。自分の足もとにある衣食住を楽しむことで、毎日がとても充実するように。

    「専業主婦時代に、衣食住を大切にしたことが、私のベースになっています。この頃、子ども服を手づくりしていなければ、チクチクもはじめていなかったかもしれません。自分の『好き』を追いかけていれば、いつか形になる。この年齢になって、それをつくづく感じています」

    画像: もとはスナックだった空間を借りてオープンした「山中倉庫」。不定期でチクチクや、つながりのある作家さんの展示会を開いています。

    もとはスナックだった空間を借りてオープンした「山中倉庫」。不定期でチクチクや、つながりのある作家さんの展示会を開いています。


    <写真/安永ケンタウロス 文/石川理恵>

    山中とみこ(やまなか・とみこ)
    布作家/専業主婦、古道具屋店主、小学校の特別支援学級の補助職員などを経て、2003年、49歳のときに大人の普段着のレーベル「CHICU+CHICU 5/31(ちくちくさんじゅういちぶんのご)」をスタート。現在は、埼玉県所沢市にてギャラリー&ショップ「山中倉庫」を不定期オープンしているほか、全国のギャラリーなどで展示会を開いている。
    Instagram:@chicuchicu315


    画像: 著者に会いたい|山中とみこさん「40代ではじめた現在の仕事」

    『時を重ねて、自由に暮らす 50代、60代からの衣職住』

    (山中とみこ著/エクスナレッジ発行)


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