『宮中 季節のお料理』より
御祝菓子|一月一日・二日・三日 ご夕餐後 御所にて

お正月の三が日、ご夕餐の御祝御膳の後に、両陛下に出されるお菓子。内容は、干菓子のおこしと日替わりの和菓子に、お口直しとして酢に浸した昆布を添えます。
お菓子は、宮内庁の大膳課がつくります。おこしは、蒸した糯米(もちごめ)を乾かして煎った「生丸(きまる)種」を砂糖、水飴、水を煮詰めた蜜で固めたもの。
和菓子のうち、一日の「舞鶴」は、小豆の漉(こ)し餡(あん)に白い鶴の模様生地を入れた蒸し羊羹。二日の「水山吹」は、木枠に軽羹(かるかん)生地、羊羹生地、軽羹生地の順に3段に流し入れて蒸し上げたもの。軽羹生地は、くちなしの実で黄色に色づけします。三日の「九重の春」は、木枠に羊羹生地と、羊羹製の黄色い雲と緑色の森の模様生地、小豆粒を入れ、蒸し上げます。
![画像: 一日 於古志(おこし)、御口祝(おくちいわい)昆布、和菓子[舞鶴まいづる]](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/12/20/cde661e78390e127c8c48126d73b89d072a1423f.jpg)
一日 於古志(おこし)、御口祝(おくちいわい)昆布、和菓子[舞鶴まいづる]
![画像: 二日 於古志、御口祝昆布、和菓子[水山吹(みずやまぶき)]](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/12/20/424cf37f057e55cfe84746c6a794401f25b0cb40.jpg)
二日 於古志、御口祝昆布、和菓子[水山吹(みずやまぶき)]
![画像: 三日 於古志、御口祝昆布、和菓子[九重の春]](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2019/12/20/fa768383d9241db5db58ad61826b03c685081fb4.jpg)
三日 於古志、御口祝昆布、和菓子[九重の春]
コラム: おこしは高級菓子? 羊羹は羊のスープ?
現在では庶民的なお菓子といったイメージの「おこし」。そのルーツは、平安時代に遣唐使によって持ち込まれた唐菓子で、当初は貴族が賞味するお菓子でした。江戸時代には、庶民でも調達が容易な材料でつくることができたことから、駄菓子や間食として全国に広まりました。
羊羹のルーツもまた中国です。とはいっても、中国の羊羹はお菓子ではなく、羊の羹(あつもの)、つまり羊の肉を使ったスープの類でした。鎌倉~室町時代に禅僧によって日本にもたらされましたが、禅宗では肉食が禁じられているため、羊肉に見立てて小豆を用いたものが、のちの羊羹の原形になったといいます。
一方、軽羹は、江戸時代半ばに薩摩藩(現在の鹿児島県)で誕生したとされています。