• 二十四節気 雨水(2月19日〜3月4日)
    日々の暮らしの中にある季節の移ろいを
    白井明大さんの詩・文と當麻妙さんの写真で綴ります。

    ぬかるみちを歩く

    一歩一歩
    ぬかるみに
    踏み入っては
    やわらかく泥に包まれる

    雪がとけ
    小雨がそぼ降り
    堅くこわばっていた凍て土は
    木の芽起こしに揉みほぐされて
    道の姿に変わるから

    ねぇ
    あなたはどこへ行きたい?

    大事な靴を汚さずにすむ道のりでは
    辿りつけないところは
    あるの

    ぬかるみちを歩くとき
    大切なことがひとつあって
    だれも泥んこにまみれずに
    そこを通れる者はいないと知ること

    変わろうとする心が
    重たい一歩を
    引きずってでも前に踏みだすとき
    変われなかったこの身も雪どけするのだろうか

    なにもかもを忘れさせる
    あの泥のような眠りの
    温みを抱きながら

    めり込む足が
    受けとめられた証をつけて
    どうか、進んで

    そう
    こころがもう
    向かいたくてたまらなくて
    しきりに顔をあげる
    晴れやかさで

    ほら
    空が咲いている

    季節の言葉:春泥(しゅんでい)

    二月十九日から、二十四節気では雨水(うすい)になります。少しずつ暖かくなり、雪から雨に変わる頃。そんな時分に雪どけや降雨などによってできる春のぬかるみを、春泥といいます。

    七十二候* によれば、二月二十九日~三月四日は、雨水末候「草木萌え動く(そうもくもえうごく)」という、草や木が萌え出づる候。

    長い冬の眠りから植物を目覚めさせ、若芽や蕾をほころばせるやわらかな早春の雨は、木の芽起こしと呼ばれます。

    *七十二候……旧暦で一年を七十二の、こまやかな季節に分けた暦。日付は2020年のものです。

    白井明大(しらい・あけひろ)
    詩人。著書『日本の七十二候を楽しむ ─旧暦のある暮らし─』が静かな旧暦ブームを呼び、30万部のベストセラーに(増補新装版をKADOKAWAより2月末に刊行予定)。近著『歌声は贈りもの』(福音館書店)、『希望はいつも当たり前の言葉で語られる』(草思社)。詩集に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊賞)ほか。

    當麻 妙(とうま・たえ)
    写真家。写真誌編集プロダクションを経て、2003年よりフリー。雑誌や書籍を中心に活動。現在、沖縄を拠点に風景や芸能などを撮影。共著に『旧暦と暮らす沖縄』(文・白井明大、講談社)。写真集『Tamagawa』。
    http://tomatae.com/


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