日々の暮らしの中にある季節の移ろいを
白井明大さんの詩・文と當麻妙さんの写真で綴ります。
なんくるみーの当たり前
土にこぼれた
種が芽を出し
かってに生えてきた植物を
しまくとぅば*で
なんくるみー
というのだそう
ちーちゃんの畑に
なんくるみーの大根が
大きく大きくなっていた
これ持ってって
、て島にんじんをくれた
天ぷらにしたら
おいしいよ 、て
ねぇ
命はかってに芽生えるふたば
地に張りめぐらせるたくましい根っこ
日を浴びたい一心で
伸びゆく茎も枝も 生い茂る葉も
そうでしょう?
ねぇ
命はかってに生まれるの
生まれた命は大事なの
大事にして
、て言っていいの
光をちょうだい
雨を降らせて
空気をいっぱい運んできて
、てそう願うのは
命の当たり前
かってに生まれた
なんくるみーこそが
明日の大地を作りあげるの
この世に生まれた
命を生きる
だれもがみんな
なんくるみーなの
ねぇ
そんな命を
雑に扱うのはだあれ?
そんな命を
平気で踏んづけてるのはだあれ?
季節の言葉:瑞雨(ずいう)
たくさんの穀物をうるおす春の雨が降りそそぐ穀雨(こくう)は、二十四節気で四月十九日からはじまる春の最後の季節です。
この時分には雨の日が多く、菜の花の咲く時期だから菜種梅雨(なたねつゆ)といったり、草木をうるおす甘雨(かんう)、蕾をほころばせて開花を促す催花雨(さいかう)などと呼んだり、春雨の名前はさまざまです。穀物を育ててくれる瑞雨(ずいう)という雨の名前もあって、まさに穀雨にぴったりです。
ちなみに七十二候**の春のラストは、四月三十日~五月四日の穀雨末候「牡丹華さく(ぼたんはなさく)」の候です。華やかな牡丹でしめくくるなんて、旧暦も粋ですね。
**七十二候……旧暦で一年を七十二の、こまやかな季節に分けた暦。日付は2020年のものです。
白井明大(しらい・あけひろ)
詩人。沖縄在住。詩集に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊賞)ほか。近著『歌声は贈りもの こどもと歌う春夏秋冬』(福音館書店)など著書多数。新刊に、静かな旧暦ブームを呼んだ30万部のベストセラー『日本の七十二候を楽しむ ー旧暦のある暮らしー 増補新装版』(KADOKAWA)。
當麻 妙(とうま・たえ)
写真家。写真誌編集プロダクションを経て、2003年よりフリー。雑誌や書籍を中心に活動。現在、沖縄を拠点に風景や芸能などを撮影。共著に『旧暦と暮らす沖縄』(文・白井明大、講談社)。写真集『Tamagawa』。
http://tomatae.com/