休校にリモートワーク、外出自粛……。いろいろとがまんしていることが多い日々、なにより辛いことのひとつは、友だちと会えないことではないでしょうか。そこで今回は、「友だち」をテーマに絵本をセレクトしました。
『ふたり』(瀬川康男・作 冨山房)
登場するのは、猫とねずみのふたりです。
にやり
と笑った猫が、
きらり
と目を光らせ、ねずみを見つめます。
ばさり
と襲い掛かると……
ひらり
と逃げたねずみは
とぷり
と水の中に逃げ込みました。
全編を通じて、「り」で終わるリズミカルな文は心地よく、オレンジ、ブルー、ネイビー、ブラウンの4色で刷られた細密な絵はアート作品としても楽しめます。
激しい攻防を見せるふたりですが、じつは仲良し。
最後は
ふたり
のんびりくつろいだ様子を見せますので、ご安心を。
『まちのいぬといなかのかえる』(モー・ウィレムズ・文 ジョン・J・ミュース・絵 さくまゆみこ・訳 岩波書店)
春、街の犬が、家族とともに田舎を訪れました。そこで知り合ったかえると、友だちになります。
田舎がはじめての犬は、
かえるに田舎の遊びを教えてもらって、大喜び。
夏、ふたたび田舎を訪れた犬は、かえると再会。またまた、めいいっぱい遊ぶふたり。
秋、街の犬は、かえるの元へまっしぐら。
なにして遊ぶ?ときくと、くたびれたから、思い出し遊びをしよう、とかえる。
冬、街の犬はかえるを探しますが、もうかえるはいませんでした。
また春がやってきて、
街の犬がかえるを待っていると、そこへりすが現れて……。
めぐる季節、寿命のちがうふたりの友情、新しい出会い、何度読んでもきゅんとくる、切ない絵本です。
『わたしとあそんで』(マリー・ホール・エッツ 文・絵 よだ じゅんいち 訳 福音館書店)
「あさひが のぼって、くさにはつゆが ひかりました。
わたしは はらっぱへ あそびに いきました。」
はらっぱでは、たくさんの生き物たちが
おもいおもいにすごしています。
わたしは、そこで出会う生き物たちに、
「あそびましょ」と話しかけ、つかまえようとしますが、だれも相手にしてくれません。
だあれもあそんでくれないので、
わたしは、ちちくさをとって、種をぷっとふきとばしました。
(ところで、ちちくさって何? と思いませんか? ぜひ絵本を見てみてくださいね。)
それからわたしは石にこしかけて、
みずすましが池に筋をひくのを見ていると
生き物たちがゆっくりと戻ってきて……。
自然とお友だちになるには、こちらから強引に近寄ってもダメで、ゆっくり、向こうのペースに合わせることが大切という、生き物と仲良くなるヒントにあふれています。
でね、これって人と人とのつきあいも同じだし、なんなら恋愛もそうよねーなんて思っています。
旧友と親交を深め、はじめましての人と仲良くなれる日常が早く戻りますように。
長谷川未緒(はせがわ・みお)
東京外国語大学卒。出版社で絵本の編集などを経て、フリーランスに。暮らしまわりの雑誌、書籍、児童書の編集・執筆などを手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
<撮影/神ノ川智早(プロフィール写真)>