• 二十四節気 立夏(5月5日~19日)
    日々の暮らしの中にある季節の移ろいを
    白井明大さんの詩・文と當麻妙さんの写真で綴ります。

    君へ

    もしも
    また夏が訪れたら
    君に手紙を書こうと思う

    元気ですか?

    と言葉にする代わりに
    青い 澄んだインクのペンで
    ゆっくり一文字ずつ

    このあいだ観た
    映画の話を
    どれほど面白かったか
    なんにも具体的じゃない
    舌足らずな感想を綴ったら

    またねも言わないで
    封をしよう

    遠さが こんなふうに
    距離を失う日が来るなんて
    思いもしなかった

    いまは
    誰もが近くて遠い
    ひとりずつの部屋から
    声をかけ合うのがつながりなら

    手紙は
    声にならない気持ちを
    運んでくれるに違いない

    また会おう

    と告げる代わりに
    何かちょっとユーモラスな
    絵柄の切手を貼って
    君のポストに届けよう

    季節の言葉:若夏(わかなち)

    五月五日から立夏を迎えて、季節は春から夏へ。沖縄では、旧暦四月から五月にかけての時期(新暦の5月~6月頃)を若夏といいます。言葉の響きにもさわやかさが感じられる、南の島の初夏です。

    今年の立夏のはじまりは、端午の節句でもありますが、もともとは菖蒲やよもぎなどの香気で身を清め、暑い夏に負けないように健やかさの備えをする節目の日だったそうです。

    七十二候*では五月五日~九日に、立夏初候「蛙始めて鳴く(かえるはじめてなく)」の候が訪れて、霜が去り、田植えの時期が来たことを知らせます。

    *七十二候……旧暦で一年を七十二もの、こまやかな季節に分けた暦。日付は2020年のものです。

    白井明大(しらい・あけひろ)
    詩人。沖縄在住。詩集に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊賞)ほか。近著『歌声は贈りもの こどもと歌う春夏秋冬』(福音館書店)など著書多数。新刊に、静かな旧暦ブームを呼んだ30万部のベストセラー『日本の七十二候を楽しむ ー旧暦のある暮らしー 増補新装版』(KADOKAWA)。

    當麻 妙(とうま・たえ)
    写真家。写真誌編集プロダクションを経て、2003年よりフリー。雑誌や書籍を中心に活動。現在、沖縄を拠点に風景や芸能などを撮影。共著に『旧暦と暮らす沖縄』(文・白井明大、講談社)。写真集『Tamagawa』。
    http://tomatae.com/


    This article is a sponsored article by
    ''.