『宮中 季節のお料理』より
節句料理|五月五日 ご夕餐 御所・お和室にて
国民の祝日「こどもの日」の5月5日は「端午の節句」です。この日、両陛下は御所のお和室に節句にちなんだ飾り物やお供え物をしつらえて、お祝いをされ、ご夕餐をとられます。
ご夕餐には、数種類のお料理を曲げ輪っぱに盛り込んだお料理の他、御飯もので散らし寿司などが出されます。献立は毎年異なります。
1 道明寺柏葉包み[鶏挽肉射込み]
2 稚ち鮎(あゆ)唐揚げ
3 海老黄身寿司
4 矢羽根蓮根
5 石川小芋田楽
6 兜糝薯(かぶとしんじょ)山吹焼き
7 わらび土佐和え 菖蒲麩
8 鰻棒寿司 甘酢茗荷
9 散らし寿司[鮪 スモークサーモン 穴子 錦糸玉子 干瓢 椎茸 蓮根 木の芽]
端午の節句|お和室のしつらい
写真は、平成30年のお和室の端午の節句のしつらい。床の間に兜(かぶと)に菖蒲の図柄の軸が掛けられ、菖蒲の葉と蓬(よもぎ)、めでたい鯛引の御台(おだい)人形と紅白梅鶴亀の御台人形が飾られています。
御台人形は、木製の台の上に御所人形や草花・動物などの作り物をのせ、能の舞台や吉祥物などを表現した人形のこと。お飾りになる人形や軸は、年によって変わります。
その前に並ぶ3つの三宝(さんぼう)には、粽(ちまき)と柏餅が飾られます。
右の三宝には柏餅餡、左の三宝には柏餅味噌餡、中央の三宝には葛羊羹(くずようかん)粽[右]、外郎(ういろう)粽[中]、水仙粽[左]をお供えします。これらはすべて宮内庁の大膳課でつくられます。
端午の節句|お供え
柏餅餡[右]、柏餅味噌餡[左]、粽(ちまき)三種[中央]
コラム: 粽と柏餅
端午の節句につきもののお菓子といえば、粽。
この日に粽を食べるのは中国に由来する風習で、楚(そ)の詩人・屈原(くつげん)[紀元前343~277年頃]が汨羅江(べきらこう)に身を投げて亡くなり、その弔いのために笹の葉で包んだ米の飯を川に投げ入れたのが始まりと伝わっています。
日本でも平安後期には食べられていたようです。もとはもち米を植物の葉で包み、灰汁で煮込んだ保存食でしたが、これが発展して菓子としての粽もつくられるようになりました。
これに対し、もうひとつの端午の節句のお菓子である柏餅は、江戸時代半ばに江戸で生まれた和菓子です。
柏の葉は新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「子孫繁栄」の縁起の良い食べ物とされています。