BESSの倭様(やまとよう)「程々(ほどほど)の家」を訪れた、挿花家の雨宮ゆかさんと写真家の秀也さん夫妻。ふたりが思う心地よい住まいの在り方とは?
※写真について:心を解き放つ土間から広縁へのつながり。しっとりと落ち着きをたたえた和の空間に、野山の景色を思わせるゆかさんの花が映える
(『天然生活』2020年7月号掲載)
心地いい暮らしを教えてくれる家
大地に根を張るように低く構えた佇まい。傾斜した大きな屋根とそれを支える存在感のある柱。BESSの倭様「程々の家」は、どっしりとした重厚さを感じさせます。
夫の秀也さんとやってきた雨宮ゆかさんは、挿花家。身近な草花で、暮らしに季節を取り入れる花活けを提案しています。倭様「程々の家」の第一印象を尋ねると、
「堂々としたデザインですが、ほどよい大きさで、親密さを感じました。思わず中に足を踏み入れたくなる外観ですね」
玄関を入ると、リビング・ダイニングとひと続きになった石張りの土間が広がります。
「広くてとても使いやすそう。大きな自然石の床がすごく贅沢。ひんやりとして風の抜けもいいので、夏はここで涼みながら読書をしたいですね」とゆかさん。写真家の秀也さんも、「仕事用の大きな機材や雨に濡れたものを、家に入れる前にいったん置いておけるのがいい」とうなずきます。
そして、フルオープンになる大開口を抜けて、土間から外へ。深い軒に守られた広縁は、自然を身近に感じながらくつろげる空間です。
「ふたりとも自宅で仕事をしているので、オンとオフの切り替えになる場所があるといいですね。早く仕事が終わった夕方には、ここでのんびり晩酌をしたいなあ」
そう話すゆかさんの理想の住まいは、「心地いい暮らしを教えてくれる家」なのだとか。
「自宅を建てる際、私たちは建築家に細かく注文を出しませんでした。実際に暮らしてみると、自分たちが知らない心地よさを家が教えてくれている、と気づいたんです」
望み通りの家よりも、“望んだ以上”をもたらしてくれる家。
倭様「程々の家」には、暮らしを楽しむ大人たちを満足させるおおらかさと心意気があります。
土間からつながる贅沢な広縁
「縁側やテラスとは異なり、この広縁は壁のない部屋のようなリラックスした印象を受けます。食事をするのにぴったりですよね。気候がよければ、一日中ここで過ごしたくらい!」とご満悦のゆかさん。
日本家屋のよさが息づくデザイン
「リビング・ダイニングとキッチンの間に扉や柱がなく、すっと横長に配置されていて、昔の田舎の家のような風通しのよさを感じます」とゆかさん。
日本家屋の懐の深さを、現代の技術や感性で伝えているのも倭様「程々の家」の特徴です。
ゆるやかな仕切りでひとり時間も充実
開放的なリビング・ダイニングとは対照的な書斎。簾戸で仕切れば、好きなことに没頭することができます。「黒は思考を促す色だと思う。自分の世界に入り込むことができそうです」と秀也さん。
重厚な登梁が頼もしい吹き抜けは、「ほどよい距離感を保ちつつ、互いの気配を感じられるのがいいですね」と秀也さん。
リビングと土間の段差がほとんどなく、外と内との行き来がしやすいデザイン。夏はひんやりした石の感触も心地いい。
BESSの倭様(やまとよう)「程々(ほどほど)の家」
どちらかに偏らない懐の深さを体現した倭様「程々の家」。
重厚さと繊細さをあわせ持ち、明るく開放的な一方で、落ち着きを感じさせる陰もある。絶妙なバランス感覚と和の意匠に、豊かな感性が息づいています。
広縁や土間が、内と外の境界線をあいまいにし、四季の移ろいをより鮮やかに感じさせてくれます。
BESSスクエア
BESSスクエア 都心にあるBESSのLOGWAY(展示場)。倭様「程々の家」をはじめ、個性豊かな5タイプの家と2タイプの小屋で、遊び心あふれる暮らしを体験できる。現在は、来場予約制となっているため、詳しくはHP( https://www.bess.jp/logway/ )をご覧ください。
●東京都目黒区青葉台1-4-5
●営業時間:10:00~18:00
●休み:水・木・金曜(祝日は営業)
<撮影/飯貝拓司 取材・文/村山京子>
提供/BESS
雨宮ゆか(あめみや・ゆか)
挿花家。花の教室「日々花」を主宰。雑誌などメディアの掲載も多数。著書に『花ごよみ365日 季節を呼びこむ身近な草花の生け方、愉しみ方』(誠文堂新光社)がある。