![画像: 「木」が出てくる絵本3冊|ずっと絵本と。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/15feb0724aebc6db39a324ecb400436af8586198.jpg)
新緑が美しい季節になりました。いろいろなことがありますが、自然の中に身を置くと、ふっと心がゆるみます。そこで今回は、「木」が出てくる絵本を選びました。
『森はオペラ』(姉崎一馬/写真・文 クレヨンハウス)
![画像: タイトルの森の字に、新芽が。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/8de67396f2dd38f510085d85a2f48123b7bbb2ad.jpg)
タイトルの森の字に、新芽が。
この本は、自然写真家である著者が、森の木々を撮影した写真に言葉を添えた写真絵本です。
「森をあるくと 遠くで 近くで きこえる」
きこえるのは、低い声、高い声。響く声、かすれた声。
![画像: 深い森の中を歩いている気分になります。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/96ccfb2c1176f91b8ba8d15f3c60247359ffd072.jpg)
深い森の中を歩いている気分になります。
森に分け入ると、外界の音がシャットダウンされ、しーんとした静けさが訪れたのちに、風にそよぐ葉ずれや、木々のぴしっ、みしっと鳴る音などが絶え間なく聞こえてきます。
わたしはそれを歌と思ったことはありませんでしたが、自然に親しむ著者には、歌、それも壮大なオペラのように聞こえるのでしょう。
![画像: この木は、どんな声で歌うのでしょうね。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/b4ef514a3fb52e2589a79262ea8a8ea7c8568d85.jpg)
この木は、どんな声で歌うのでしょうね。
今度、森を訪れることがあったら、木々に耳をすませて、思い思いの歌を聞いてみたいと思うのです。
巻末には、本に登場する木がどこの何の木かキャストとして紹介してあって、木の名前を覚えられるのもうれしいですね。
『ぶたのたね』(佐々木マキ/作 絵本館)
![画像: うれしそうに火を焚くおおかみ。ぶたさんの運命やいかに……。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/89ec3d60a14022067d725cbc2abef0db3d95e365.jpg)
うれしそうに火を焚くおおかみ。ぶたさんの運命やいかに……。
主人公は、走るのが遅いおおかみです。
あまりにも遅いので、ぶたを捕まえられた試しがありません。
ある日、ぶたにばかにされたおおかみが泣いていると、きつね博士がやってきて、ぶたの実がなる木のたねをくれるというではありませんか。
ぶたのたねと、成長が早まる薬をもらったおおかみ。毎日、大切に育てていたら、とうとう、まるまると太ったぶたが何匹も実って……。
![画像: たわわに実ったぶたたち。木がちいさいときは、どんな姿だったのでしょうね。ちいさいぶた?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/f8728d495baf8034fc26eec61c082215d6bb5590.jpg)
たわわに実ったぶたたち。木がちいさいときは、どんな姿だったのでしょうね。ちいさいぶた?
走るのか遅くて泣き虫なおおかみというユニークなキャラクターに、ぶたのなる木という奇想天外な設定は、かたくなった大人の頭をやわらかく刺激してくれます。
ちょっと心がくたびれちゃったな、というときに、ふふっと笑わせてくれるこういう絵本は、本棚の定位置に常備薬のように置いておきたいのです。
『木をかこう』(ブルーノ・ムナーリ/作 須賀敦子/訳 至光社)
![画像: 木の成長にはなにやら規則性があるようです。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/d3d80153e5366692311f90af001bcce81406f4cf.jpg)
木の成長にはなにやら規則性があるようです。
世界的に有名なイタリアの美術家、ブルーノ・ムナーリによる、木の描き方を紹介する絵本です。
木の枝は、幹から遠くなるほど細くなります。そして2本に分かれるものや3本に分かれるものなど、さまざまありますが、2本に分かれるものは、まず幹から枝が2本出て、その枝がまた2本に分かれ、と成長していきます。
![画像: 枝の太さや別れる位置はいろいろあっても、ルールは同じ。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/696f79ddd4f28b3ada04bcd2bfb16306d7851ba8.jpg)
枝の太さや別れる位置はいろいろあっても、ルールは同じ。
風に吹かれて曲がった木もあれば、枝が垂れてしだれ柳のようになった木もあります。2本の枝のうち、1本だけが長くなったり、短くなったりしたものも。
それでも、よく見ると、規則性は保っています。
![画像: 葉っぱの葉脈のような姿をした木も。木にはいろいろな種類がありますからね。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/336b56f8efb2ff2a35e9e3fc35ee25e885dfb527.jpg)
葉っぱの葉脈のような姿をした木も。木にはいろいろな種類がありますからね。
この本では、いろいろなタイプの木を紹介しながら、その描き方を教えてくれます。
でも本当に大切なことは、木が上手に描けるようになることではないんですよね。ものごとの本質をよく見ること、そして、完璧でなくてもいいから、自分の手でつくってみること、いろいろ試してみること。
そんなメッセージが伝わってくる気がしますし、これはさまざまなことに当てはまるのだろうな、と思っています。
![画像: 『木をかこう』(ブルーノ・ムナーリ/作 須賀敦子/訳 至光社)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/05/21/06504581e7c2370d80ddb9b09ec7b0619e521aab.jpg)
長谷川未緒(はせがわ・みお)
東京外国語大学卒。出版社で絵本の編集などを経て、フリーランスに。暮らしまわりの雑誌、書籍、児童書の編集・執筆などを手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
<撮影/神ノ川智早(プロフィール写真)>